第24話 妖精王
◇
話を終えて、結城は凜音達の待つ控室へと入った。
すると中にはヒーローが15人ほど集まっている。
「あっパパ帰ってきた」
「なにやってたんですか?」
「金持ちに嫌味聞かされてた。結構いっぱい呼ばれてるんだな」
「すごいですよ、海外の有名チームもいますし」
律が指差す先に金髪爆乳のウェスタンハットに、赤ビキニ、デニムのホットパンツ姿の女性チーム。
スーツ姿のホストのようなイケメンチーム。
筋骨隆々で、全員パピヨンマスクとボンデージスーツを着た中年男性たち。
「ジューシーズにワイルドガンズ、不夜城、SMガイズか。全部タレント人気の高いBクラスのヒーローだな」
「一部おかしいのがいますよね」
「変態よ変態」
「SMガイズはもっともAランクに近いヒーローだぞ。俺も彼らの実力は認めている。少し話したことがあるが、彼らはとても紳士だ」
「あの格好で紳士と言われても困るわ」
「でも、パパが認めるほどなんですね」
3人はSMガイズを眺めていると、彼らはこちらに丁寧な礼をする。慌てて3人も頭を下げて返す。
「やはり礼儀正しい。彼ら平日昼間はサラリーマンやってるらしいからな」
「そこは変に社会人性だされるより、変な人でいてほしかったわ」
「俺の持論だが、見た目クレイジーなやつは中身まともな人間が多い」
「パパ、闇が深すぎてついていけません」
いろいろなヒーローを眺めていると、控室に星宮ウォーターランドオーナーの玉木が姿を現す。
白髪スーツ姿で貫禄のある男性は、ヒーローたちに挨拶を行う。
「皆さん本日はお越しいただき、ありがとうございます。
これより皆さんには水着に着替えていただき、スタッフとして活動してもらいます。
また全チーム、協賛スポンサーの飲料水を販売していただくようお願いします。販売実績が大きいチームには、別途ボーナスを用意しておりますので、楽しみにしていて下さい」
玉木の話を聞いて、結城はふむと頷く。
「競争みたいで面白いな」
「こういう手売りって、ほとんど人気投票みたいになるわよ」
「まぁまぁ販売はあくまで警備のカモフラージュだからな。クライアント的には盛り上がればそれでOKなんだろうな」
玉木の挨拶が終わると、ヒーローたちは男女分かれて更衣室へと向かい着替えを行う。
律はロッカーの前でスカートを脱ぎながら、隣のツインテを見やる。
「ほんと嫌味なくらいたわわですね」
凛音の爆乳を包むのは頼りない肩紐のブルーの水着。
サイズが小さいのか、乳周りがハミチチしたセクシーなものだ。
「律も良いケツしてんじゃん」
凛音はペチンと競泳水着を着た律の尻を叩く。
「セクハラですよ」
「律も触っていいわよ、あたしの胸」
「いえ、敗北感だけが残りそうなのでいいです」
二人は水着の上に、スタッフと書かれた白のTシャツを着る。
すると、その格好を見たジューシーズのアップルがプププと笑う。
「あなた達、そんなダサいシャツ着て販売やるつもりなの?」
アップルは、メタリックレッドの際どいビキニを着て仁王立ちしていた。
青紫のアイシャドウに真紅のルージュ、頬には頬骨が強調されるくらいファンデーションが塗られている。
いずれも耐水性で、プールに入った程度では落ちない強固な厚化粧である。
「「下品」」
「んま! この完璧で究極のボディを見て言う事!?」
「メイクきつすぎますよ」
「あんた、また豊胸した?」
「ええ,20万かけてね」
「あんたが元ペチャパイなのは知ってるけど、10代で豊胸なんかやらないほうがいいわよ」
「うるさいわね、美を買ってるの。それが何が悪いの?」
「豊胸の相場って知りませんけど、20万って安すぎません? ああいうのって一応外科手術ですから、100万くらいしますよね?」
「ちょっと美紀、ジャンプしてみて」
「なによ」
アップルは言われたとおりに跳んでみる。
「あんた……乳揺れなさすぎじゃない? 不自然よ」
「詰め物を入れすぎて、胸の稼働スペースがなくなってます」
「張りがある胸なの!」
「シリコン入れすぎだって限度があるわよ。美紀、整形は全然いいと思うけど安物はやめときなって。おっぱい壊れるわよ」
「もういいわ、あんたらと話してるとイラついてくる!」
アップルは肩を怒らせて更衣室を出ていった。
「じゃあ絡んでこなきゃいいのに」
「是が非でも我々にマウントとりたいんでしょうね」
「SNSでもいるわね。他の女より幸せにならないと気がすまない女」
元リーダーを見送った後に、ウェスタンハットの女性が着替えを始める。
二人はボロンと出たものに唖然とする。
「さすが、外国の方は違うわ」
「服脱いだだけで大地震が起きてるじゃないですか」
二人の視線が胸の揺れに合わせて上下に揺れる。
女性は二人の視線に気づいて、笑顔と共に体をくねらせてみせた。
「しかもノリがいい美女」
「ワイルドガンズの方ですね」
「ヘイガール、マイネームイズグレース」
「へ、へろーぐれーす」
「ナイストゥーミーチュー」
なんとか中学生英語で対応しようとするが、グレースはクスクスと笑う。
「ソーリー、今日は頑張りましょうネ」
グレースはホットパンツを脱ぐと、グラマーな水着姿になりプールへと出ていく。
「日本語喋れるんかい」
「胸は凜音先輩最強だと思ってましたけど、上には上がいますね」
二人がプールサイドに出ると、全面ガラス張りの天井から眩い光が差し込む。
夏でもないのに熱く感じるのは、空調がきいているのと、すでにたくさんの客が入っているからだろう
広々としたプールは、水着姿の家族連れやカップルで賑わっていた。
「さてパパはと……」
凜音が結城を探すと、スタッフTシャツにハーフパンツ水着の結城が姿を現す。
どっからどう見ても、日曜日に家族サービスにつきあわされる男なのだが、凜音たちの目にはどこかキラキラと輝いて見える。
「プールサイドのパパもありだなぁ。シャツの上からでもわかるパパの割れた腹筋がセクシー」
「ええ、できればシャツ脱いでほしいですね」
「後でパパに水かけて透けTにしよっか」
「凜音先輩、我々エロガキみたいなこと言ってますよ」
彼の後にゴールドのブーメランパンツを履いた、財園寺が姿を現す。
するとフェアリーガーディアン所属のヒーローたちが、結城を押しのけ彼を取り囲みキャーキャーともてはやす。
「やーやー僕の可愛い妖精たち。君たちの御主人様であるオーヴェロン金光が来たよ」
「キャーオーヴェロン様!」
「オーヴェロン最高!」
黄色い悲鳴を上げる中には、ばっちりアップルの姿もあった。
「ほんとあの女誰にでも尻尾振るわね。ってかオーヴェロンって何よ」
「神話か何かで妖精王だったはずです。多分フェアリーガーディアンの王だから、オーヴェロンを名乗ってるんじゃないですか?」
「なるほど……ダサくない?」
「まぁオーナーのキャラ付けでしょうし」
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