第24話 妖精王


 話を終えて、結城は凜音達の待つ控室へと入った。

 すると中にはヒーローが15人ほど集まっている。


「あっパパ帰ってきた」

「なにやってたんですか?」

「金持ちに嫌味聞かされてた。結構いっぱい呼ばれてるんだな」

「すごいですよ、海外の有名チームもいますし」


 律が指差す先に金髪爆乳のウェスタンハットに、赤ビキニ、デニムのホットパンツ姿の女性チーム。

 スーツ姿のホストのようなイケメンチーム。

 筋骨隆々で、全員パピヨンマスクとボンデージスーツを着た中年男性たち。


「ジューシーズにワイルドガンズ、不夜城、SMガイズか。全部タレント人気の高いBクラスのヒーローだな」

「一部おかしいのがいますよね」

「変態よ変態」

「SMガイズはもっともAランクに近いヒーローだぞ。俺も彼らの実力は認めている。少し話したことがあるが、彼らはとても紳士だ」

「あの格好で紳士と言われても困るわ」

「でも、パパが認めるほどなんですね」


 3人はSMガイズを眺めていると、彼らはこちらに丁寧な礼をする。慌てて3人も頭を下げて返す。


「やはり礼儀正しい。彼ら平日昼間はサラリーマンやってるらしいからな」

「そこは変に社会人性だされるより、変な人でいてほしかったわ」

「俺の持論だが、見た目クレイジーなやつは中身まともな人間が多い」

「パパ、闇が深すぎてついていけません」


 いろいろなヒーローを眺めていると、控室に星宮ウォーターランドオーナーの玉木が姿を現す。

 白髪スーツ姿で貫禄のある男性は、ヒーローたちに挨拶を行う。


「皆さん本日はお越しいただき、ありがとうございます。

これより皆さんには水着に着替えていただき、スタッフとして活動してもらいます。

また全チーム、協賛スポンサーの飲料水を販売していただくようお願いします。販売実績が大きいチームには、別途ボーナスを用意しておりますので、楽しみにしていて下さい」


 玉木の話を聞いて、結城はふむと頷く。


「競争みたいで面白いな」

「こういう手売りって、ほとんど人気投票みたいになるわよ」

「まぁまぁ販売はあくまで警備のカモフラージュだからな。クライアント的には盛り上がればそれでOKなんだろうな」


 玉木の挨拶が終わると、ヒーローたちは男女分かれて更衣室へと向かい着替えを行う。


 律はロッカーの前でスカートを脱ぎながら、隣のツインテを見やる。


「ほんと嫌味なくらいたわわですね」


 凛音の爆乳を包むのは頼りない肩紐のブルーの水着。

 サイズが小さいのか、乳周りがハミチチしたセクシーなものだ。


「律も良いケツしてんじゃん」


 凛音はペチンと競泳水着を着た律の尻を叩く。


「セクハラですよ」

「律も触っていいわよ、あたしの胸」

「いえ、敗北感だけが残りそうなのでいいです」


 二人は水着の上に、スタッフと書かれた白のTシャツを着る。

 すると、その格好を見たジューシーズのアップルがプププと笑う。


「あなた達、そんなダサいシャツ着て販売やるつもりなの?」


 アップルは、メタリックレッドの際どいビキニを着て仁王立ちしていた。

 青紫のアイシャドウに真紅のルージュ、頬には頬骨が強調されるくらいファンデーションが塗られている。

 いずれも耐水性で、プールに入った程度では落ちない強固な厚化粧である。


「「下品」」

「んま! この完璧で究極のボディを見て言う事!?」

「メイクきつすぎますよ」

「あんた、また豊胸した?」

「ええ,20万かけてね」

「あんたが元ペチャパイなのは知ってるけど、10代で豊胸なんかやらないほうがいいわよ」

「うるさいわね、美を買ってるの。それが何が悪いの?」

「豊胸の相場って知りませんけど、20万って安すぎません? ああいうのって一応外科手術ですから、100万くらいしますよね?」

「ちょっと美紀、ジャンプしてみて」

「なによ」


 アップルは言われたとおりに跳んでみる。


「あんた……乳揺れなさすぎじゃない? 不自然よ」

「詰め物を入れすぎて、胸の稼働スペースがなくなってます」

「張りがある胸なの!」

「シリコン入れすぎだって限度があるわよ。美紀、整形は全然いいと思うけど安物はやめときなって。おっぱい壊れるわよ」

「もういいわ、あんたらと話してるとイラついてくる!」


 アップルは肩を怒らせて更衣室を出ていった。


「じゃあ絡んでこなきゃいいのに」

「是が非でも我々にマウントとりたいんでしょうね」

「SNSでもいるわね。他の女より幸せにならないと気がすまない女」


 元リーダーを見送った後に、ウェスタンハットの女性が着替えを始める。

 二人はボロンと出たものに唖然とする。


「さすが、外国の方は違うわ」

「服脱いだだけで大地震が起きてるじゃないですか」


 二人の視線が胸の揺れに合わせて上下に揺れる。

 女性は二人の視線に気づいて、笑顔と共に体をくねらせてみせた。


「しかもノリがいい美女」

「ワイルドガンズの方ですね」

「ヘイガール、マイネームイズグレース」

「へ、へろーぐれーす」

「ナイストゥーミーチュー」


 なんとか中学生英語で対応しようとするが、グレースはクスクスと笑う。


「ソーリー、今日は頑張りましょうネ」


 グレースはホットパンツを脱ぐと、グラマーな水着姿になりプールへと出ていく。


「日本語喋れるんかい」

「胸は凜音先輩最強だと思ってましたけど、上には上がいますね」


 二人がプールサイドに出ると、全面ガラス張りの天井から眩い光が差し込む。

 夏でもないのに熱く感じるのは、空調がきいているのと、すでにたくさんの客が入っているからだろう

 広々としたプールは、水着姿の家族連れやカップルで賑わっていた。


「さてパパはと……」


 凜音が結城を探すと、スタッフTシャツにハーフパンツ水着の結城が姿を現す。

 どっからどう見ても、日曜日に家族サービスにつきあわされる男なのだが、凜音たちの目にはどこかキラキラと輝いて見える。


「プールサイドのパパもありだなぁ。シャツの上からでもわかるパパの割れた腹筋がセクシー」

「ええ、できればシャツ脱いでほしいですね」

「後でパパに水かけて透けTにしよっか」

「凜音先輩、我々エロガキみたいなこと言ってますよ」


 彼の後にゴールドのブーメランパンツを履いた、財園寺が姿を現す。

 するとフェアリーガーディアン所属のヒーローたちが、結城を押しのけ彼を取り囲みキャーキャーともてはやす。


「やーやー僕の可愛い妖精たち。君たちの御主人様であるオーヴェロン金光が来たよ」

「キャーオーヴェロン様!」

「オーヴェロン最高!」


 黄色い悲鳴を上げる中には、ばっちりアップルの姿もあった。


「ほんとあの女誰にでも尻尾振るわね。ってかオーヴェロンって何よ」

「神話か何かで妖精王だったはずです。多分フェアリーガーディアンの王だから、オーヴェロンを名乗ってるんじゃないですか?」

「なるほど……ダサくない?」

「まぁオーナーのキャラ付けでしょうし」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る