第6話 ドラゴンとの決着
いい加減、ドラゴンに勝てるのではないか。
そう思い立った俺は、勇気を奮い立たせて出発し、そして食い殺されて屋敷の魔法陣に戻ってきた。
ぐぬぬ、と唸るしかない。
また武器と防具を作り直し、鍛え直す日々。
――――
HP:381
MP:9999999999999999999999(計測不能。推定∞)
魔力:5023
攻撃力:155(+45)
防御力:190(+30)
素早さ:234
――――
今度こそ……ちっ、また殺された!
――――
HP:470
MP:9999999999999999999999(計測不能。推定∞)
魔力:6102
攻撃力:183(+45)
防御力:311(+30)
素早さ:307
――――
ぐぇぇぇ、また死んだぁ……。
――――
HP:667
MP:9999999999999999999999(計測不能。推定∞)
魔力:7620
攻撃力:309(+45)
防御力:453(+30)
素早さ:416
――――
そして、いつものように殺された。
もう何度目だろうか。
生き返るといっても、殺される瞬間は痛いのだ。
なにより、努力が通用しなかったのが辛い。
もうなにをやっても、あのドラゴンを倒せないのでは。
そんな気分になってくる。
心がチクチク痛む……いや違う。全身が痛い。いつもの生き返りと違う。全身が引き裂かれそうだ。なにが起きてるんだ!?
【死亡回数が規定に達しました】
【アンデッド化します。種族を選んでください】
【ゾンビ】or【吸血鬼】
頭の中に文字が流れてくる。
死にすぎたのが原因なのか。
とにかくこの痛みから逃げたい。そしてゾンビと吸血鬼なら、圧倒的に吸血鬼がいい!
――――
名前:アスカ・スズキ
種族:エルフ型ホムンクルス(真祖)
HP:1667
MP:9999999999999999999999(計測不能。推定∞)
魔力:8620
攻撃力:1309(+45)
防御力:1453(+30)
素早さ:1416
――――
な、なんだ、これ……凄いぞ。全ての数値が千も上がったぞ。
これが吸血鬼になるということか。
うおおおっ、俺は人間をやめたぞジョジョ――ッ!
これなら絶対にドラゴンに勝てる。
今から再戦だ。
太陽の日差しが熱い。俺の勝利を約束してくれているみたいだ。
……って熱い。痛い。肌が焼ける。どんどん体が灰になって――死んだ。
悲しい。
だが固有スキルに『日光耐性:弱』というのが追加された。
繰り返せば、更に日光に強くなるかもしれない。
俺は早速、全裸になって日光浴をする。
痛い。泣きそうな激痛が肌を刺す。けれど、さっきみたいに即死はしない。そのまま一時間ほどじっくり体を焼いて、俺は死んだ。
『日光耐性:中』を習得。
次の日。
朝から夕方までたっぷり時間をかけて死ぬと『日光耐性:強』になった。
もう太陽の下でも、まったく苦痛を感じない。
明日こそドラゴンを倒すぞ。
そう決意して眠りにつく。
が。
真夜中、強烈な乾きを感じて目が覚めてしまった。
いくら水を飲んでも乾きが癒えない。
なんだ……俺はなにを求めているんだ?
血。
そうだ血だ。
血が欲しい。血を飲みたい。血、血、血。血を寄こせ。血血血、血血血血血血。
この俺が血を求めているんだぞ。ならそっちから捧げに来るべきだろうが。俺は真祖だ。王だ。使えぬ奴らめ。尽く殺して血を飲み干してやる――。
窓の外からドラゴンの咆哮が聞こえた。
俺の意思を感じ取り、血を飲ませるために来たのか。いいや違うな。俺の意思を感じたのは確かだろうが、俺に従うつもりは毛頭ない。あのドラゴンは、己こそが王であると言っているのだ。生意気な吸血鬼風情を焼き尽くすために来たのだ。
面白い。生意気なのはどちらか教えてくれる。
――気がつくと、朝日が昇っていた。
辺り一面には肉片とドラゴンの鱗、そして屋敷の瓦礫が広がっている。
それら全てが赤い鮮血で染まっている。
俺の手足も真っ赤だ。
お腹がずしりと重い。ドラゴンの血を大量に飲んだのだ。
おぼろげながら覚えている。
俺は魔法を乱れ撃って空飛ぶドラゴンの翼を穴だらけにし、落ちてきたところに飛び乗って、素手で肉を引き裂いたのだ。
ドラゴンの巨体がのたうち、炎のブレスが吹き荒れる。
俺は意に介さずにドラゴンを生きたまま解体して、生き血を飲んで、心臓を両腕で抱きしめて破裂させた。
その戦闘で周りの森が燃え、そして屋敷は完全に崩壊した。
「もう魔法陣で復活できないのか……」
いつの間にか装備していた剣とローブがなくなっていた。
ドラゴンの爪で新しい剣と鞘を。鱗でワンピースを作った。
瓦礫の中を歩き回ると、真っ二つに割れた魔法陣を見つけた。
それからヒビ割れた水晶玉も。手をかざすと、最後の力を振り絞るように光を出した。
――――
名前:アスカ・スズキ
種族:エルフ型ホムンクルス(真祖)
HP:1690
MP:9999999999999999999999(計測不能。推定∞)
魔力:8635
攻撃力:1408(+100)
防御力:1473(+70)
素早さ:1516
固有スキル:『モンスタースキルコピー』『日光耐性:強』『吸血衝動耐性:中』『夜の王』
魔法スキル:『魔弾』『プチファイヤ』『ファイヤーアロー』『ファイヤーボール』『インフェルノ』『アイシクルアロー』『コキュートス』『ライトニング』『サンダーストーム』『エロアカッター』『トルネード』『ウォーター』『ウォーターカッター』『ホーリー』『ライティング』『ライトアロー』『ポイズン』『ポイズンヒール』『ヒール』『プロテクト』『リフレクト』
モンスタースキル:『スライム:お肌プルプル』『ゴブリン:あらゆる生物のメスを孕ませる』『ミミック:アイテム合成』『レッドドラゴン:炎のブレス』
――――
やがて光が消え、水晶玉は粉々になってしまう。
はたして、俺は何年この屋敷に世話になっただろうか。二年か五年か。もしかしたら十年近くいたのかもしれない。
その生活は終わった。
なにもかも砕け散った。
「いや……強くなった俺は残った」
もともと屋敷の所有者だった爺さんに手を合わせる。
あなたがいたから。召喚してくれたから。蔵書を残してくれたから。俺はドラゴンより強くなって、ここから巣立てる。
「本当にありがとうございました。それじゃあ、行ってきます」
美少女エルフおじさんは童貞を捨てられない。MPが無限なのでノンビリ冒険しよう 年中麦茶太郎 @mugityatarou
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