第50話 恋愛相談!

「お姉ちゃんが悩みそうなこと……うーん」


「お姉ちゃんというよりも、女子としての悩みとかじゃないか? 人には言えない女子の秘密とか」


「お姉ちゃん、そこら辺の悩みも私に話してくれるからそれはないと思うよ。胸が大きくなったとかも話してくれるし」


「それは……うん、仲がよろしいことで」


 水瀬は隠し事をしないタイプだとは俺も思う。何か相談したいことがあると真っ先に加菜に相談するはずだ。


 それを相談しないとなると、一人で考えるしかない悩み。妹には話せないこと……か。


「恋愛相談!」


 俺も必死に考えていると、加菜は急に声を張り上げる。


「……言われてみればそうだな」


 これまでの会話で、水瀬の恋愛に関して確かに聞いたことがない。

 人の恋愛には首を突っ込んで茶化してくるのに、好きな人がいるかすら知らない。


「人生で一度もお姉ちゃんに恋愛相談とか、好きな人のことも私聞いたことがない」


「意外だな」


「私も今考えてハっとしたよ。お姉ちゃん、そうゆうの聞いても濁して終わるんだもん」


「ノリノリで話してそうなのに、加菜にも言わないんだな」


「うん……頑なに言わないね」


 なら、水瀬が悩んでいるとしたら恋愛でということになるな。

 加菜にすら言えない内容となると、相当悩んでいるみたいだな。


 しかし、本人に直接聞けるわけでもないし、時間が解決してくれるとも限らない。

 やはり加菜に相談に乗って貰った方がいいと思うのだが、そこにどう持っていくかが肝になる。


「水瀬にさりげなく聞けたりしないのか?」


「どうだろ……恋愛のことなんてお姉ちゃんから聞き出せるのかな」


「そこは姉妹の仲を信じて聞いてみてもいいかもな」


「お姉ちゃん、話してくれるといいんだけど……」


 深刻そうに俯く加菜。


 今考えても仕方がないと言ったらそうだ。本人がこの場に居るわけじゃないし、居たとしても話してくれるかすら分からない。


「加菜なら大丈夫だよ。水瀬のこと大好きなんだから」


 ここは俺の出る幕はない。加菜に任せっきりと言えばそうなのだが、水瀬とちゃんと話をできるのは加菜しかいないからな。


「とりあえずさ、今日は記念日だったし考えるのやめようよ。お姉ちゃんも記念日にこんな話してると怒ってきそうだし」


 俯いていた加菜は顔を上げてはにかむ。


「怒って殴ってきそうだな」


 と、俺も小さく笑う。


「映画でも見ようよ。怖いやつ」


「ホラーか~。優し目のやつにしてくれよ?」


 ソファーに二人並ぶと、肩を寄せ合いテレビをつけるのであった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る