第49話 お姉ちゃんからのプレゼント?

「壮馬……」


 加奈の頭を撫でながら言う俺に、上目遣いで名前をポツリと呟く。


「まぁ、先の話になると思うけどな」


「遠い未来の話?」


「いや、多分そう遠くない未来だよ」


「そっか」


 結婚なんてものは、高校生で考えるのはまだ早い話だろう。

 だけど、そう遠くない未来。二、三年後には考える時が来るかもしれない。

 その時は、俺から結婚指輪をプレゼントしたい。


「ね、ネックレス。私に付けてよ」


 俺にネックレスを手渡すと、背中を向ける加菜。


「いいよ。けど、このネックレスに似合う服を持ってると思うから一緒に着て欲しいんだけど」


「服?」


「そうそう。水瀬から貰ってないか?」


 そういえば、一度もその話を聞いていないな。

 加菜のことだから水瀬からプレゼントを貰ったら俺に自慢してくるのに、今着ていてもおかしくないのに、加菜は普段着だ。


「お姉ちゃんからのプレゼント? 何それ知らない」


「マジ?」


「結構マジ」


 ネックレスを付けると、俺の方を向いて真顔で言う。


「お姉ちゃんは私に服をプレゼントする予定だったの?」


「というか、買ってるぞ?」


「なんでそのことを壮馬は知ってるの?」


「そりゃー……プレゼントをどうするかくらいの話はするだろ」


「それもそうか」


 一緒に行ったなんてあまり言いたくない。変な誤解はされないが、嫉妬されそう。

 水瀬がプレゼントを加菜にあげていないのも不思議だ。

 家に帰った瞬間に加菜に着せて喜んでそうなのに。


「お姉ちゃん、大丈夫かな……」


「どうしたんだ?」


 ポツリと呟き、俯く加菜。


「最近、ちょっと様子がおかしいんだよね。なんか元気がないのに、ずっと笑顔だから」


「学校の時に使ってる、演じてる笑顔みたいってことか?」


「そうそれ!」


 俺の感じた違和感はどうやら当たってたようだ。

 別れ際に向けられた笑顔は、作っていたもので確定。

 加菜も違和感を感じていたなら間違いはないだろう。


 でもどうして。最近何変わったことでもあったのか?


「私の見てないところでため息が多くなったり、やっぱり笑顔が作ってることの方が多くなった気がする。私の前でも」


「最近、何か水瀬が落ち込むようなことあったか?」


「それが分からないから私も困ってるんじゃん」


 頭を悩ませる加菜。

 最愛の姉のことだ。心配する加菜の気持ちも分かる。


 今日は、俺達の記念日を祝うはずだったが、それよりも考えなくてはいけない話題が出来てしまった。


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