第48話 せーの!
「あ、楽しむ前にまずは――」
加奈はそう言い部屋の押し入れの方へと移動し、一つの小さな箱を取り出す。
その箱は綺麗にラッピングされており、リボンまで付けられていた。
「一ヶ月ありがとう。これからもよろしくね」
手のひらサイズの箱を俺の手の平に置くと、加奈は小さくお辞儀をする。
「プレゼントか?」
「うん、頑張って選んだから喜んでくれると嬉しいな」
「何を貰っても俺は喜ぶ自信がある」
まさか加奈からもプレゼントがあるとは思わなかった。
うじうじと様子を伺っていたせいで、先を越されてしまった。
この際、俺も渡して一緒に開けるとしよう。
「実は俺もあるんだよな」
と、バッグの中から先日買ったプレゼントを取り出し、加奈に手渡す。
「えぇ~! 壮馬くんもプレゼント買っててくれたのぉ~!」
手渡された俺のプレゼントに、加奈の目はキラキラと輝く。
「じゃ、せーので開けるか」
「そうだね! せーので開けよ!」
目を合わせ、二人一緒に箱へと手を掛ける。
「「せーの‼」」
パカっと同時に中身を見る。
俺へのプレゼントは、シルバーの指輪。よく見ると、記念日の日付と俺達のイニシャルが刻印されていた。
「これ、いいな」
手に取り、右手の薬指にはめてみる。
天井に手を当てると、ライトに反射する指輪はどの指輪よりも綺麗であった。
なんだ。水瀬に指輪をプレゼントはセンスがないと言われていたが、貰ったらめちゃくちゃ嬉しいじゃないか。
まさか、嘘を教えたわけではなかろうな? まぁ、そのおかげで加奈に似合うネックレスを見つけられたからいいのだが。
「これ……好き」
俺のプレゼントに、とろけるような笑顔を浮かべる加奈。
気に入ってくれたようで何よりだ。これでもし『センスがない』とか言われてたら完全に心が折れていたからな。
「この指輪も、最高だ」
右手の薬指にはめられた指輪を眺めながら言う俺に、
「なんで右手に付けてるの?」
加奈はきょとんとした顔を浮かべる。
「なんでって、結婚指輪じゃないからなこれ」
「私、左手の薬指に付けて欲しかったんだけど……」
「それはまだ早いんじゃないのか?」
「結婚はしてないけど、雰囲気だけでも味わいたかったんだもん」
プクリと頬を膨らませる。
結婚指輪ではないが、それらしい雰囲気を味わいたかったのだろう。
でも、俺は左手の薬指には今はつけない。
「左手の薬指につけるのは、二人揃ってからがいいかな」
二人で指輪を交換するまでは空けておきたいからな。
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