第47話 記念日
「さてと、一ヶ月記念を祝して~」
「「かんぱぁ~い!」」
記念日当日の放課後、俺は加菜の部屋へと足を運んでいた。
目の前で掲げたグラスに笑顔を向けるのは、今日のヒロインである加菜。
テーブルの上には二リットルコーラが一本と、ポテチやチョコ、ポップコーンなどのお菓子が並べられていた。
白い壁にはプロジェクターが当てられ、ネット配信映画が表示されている。
「やっぱり、こうして二人で落ち着ける空間っていうのはいいよね」
「誰にも邪魔されないしな」
俺の肩に持たれかかる双葉の頭をそっと撫でる。
外に出ると色々な危険が待ち構えているからな。
水瀬とか五月雨とか……考えるだけでも面倒くさい。
しかしこの家には今、俺と加菜の二人しかいない。
水瀬は友人と出かけているらしい。多分、気を利かせてくれたのだろう。
「今日は二人で記念日をとことん楽しもう!」
コーラを一気に飲み干すと、グラスを置いて俺に抱きついてくる加菜。
「二人きりじゃなかったら、こんなことできないしな」
「当たり前じゃん。お姉ちゃんとか五月雨ちゃんに見られたくないもん」
「まぁ、恥ずかしいよな」
「いつも我慢してるんだから。こうゆう時くらいは甘えさせよね」
「俺はいつでも甘えてくれていいんだけどなー」
「私の話聞いてた?」
「水瀬と五月雨だろ? あいつらももう気にしないだろ、いくら俺達がイチャついても」
「私が恥ずかしいの! ……やっぱ私の話聞いてないじゃん」
加菜はプクリと頬を膨らませる。
甘えてくる加菜はどうしてこんなに可愛いんだ。
周りを気にしなくていいとなると、いつもの百倍俺にくっついてくる。
まるで猫みたいだ。
「映画を見ながらポップコーンをつまんで、乾いた口の中にコーラを流し込む。隣には加菜が居て……なんて幸せなんだろう」
この空間以上に幸せな場所などこの世に存在しないだろう。
まぁお家デートなんて、最終的にたどり着くのは一つの行為しかない。そこまでの過程が大事だ。
存分にイチャついてからするエッチはさぞ格別なんだろうな。
……おっといけない。
今日の目的はそこじゃない。記念日のプレゼントを渡さなければいけない。
性欲に負けて一番忘れてはいけないメインイベントを忘れるところだった。
でも、どうやって渡せばいいのだろうか。
改まって渡せばいいのか、普段と変わらないテンションで渡せばいいのか、どちらがいいか全く分からない。
映画でも見つつ、様子を伺いながら機会を探るとするか。
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