第28話 だって、こんなに幸せなんだもん

 楽しい時間などすぐに終わるものだ。

 終わって欲しくないと願っても、時間は刻一刻と過ぎていく。


 だからこそ、その限られた時間でいかに楽しむかがカギなのだ。

 このデートももう残り少なくなっている。

 時刻は夕方の6時。帰りのことも考えて、あと30分後にはここを出発しなければいけない。


「最後、どこ行こっか」


「もう乗り物は懲り懲りだぞ」


 一日中歩き周り、ジェットコースターなどに永遠と乗っていた俺の体は既に限界を迎えていた。


 園内だけで10キロ以上歩いている。

 それに乗り物も加わると、どれだけ朝元気があったとしても夕方には誰でも限界を迎えるはずだ。


 目の前に例外がいるが、もう人間じゃないかもしれない。

 本当にJKという生き物は人外だ。加奈に関しては可愛さも体力も異次元級。


 体力なんかはエッチの時にこちらが疲れていることなどお構いないし「もう一回、もう一回!」とせがんでくるくらいの体力お化けだ。


 嬉しい反面、勘弁してとも思う。


「じゃあさ、広場の映えるベンチで写真撮って帰ろ」


 手に持っていたマップを広げ、行きたいところを指さす加奈。


「流石、映える場所が分かってるんだな」


「まぁ私JKだし? それにデート来る前に色々リサーチしてきたから」


「抜かりないな」


「壮馬だって調べてくれてたの、私知ってるんだよ?」


「……バレてたか」


 見透かすような笑みを向けてくる加奈に、俺は苦笑する。

 どこから情報を拾ってくるんだ? 誰にも言ってないはずなのに。


 もしやスマホの検索履歴を見られて……いや、加奈が見るわけがない。

 となると水瀬という可能性がなくはない。


 これからあいつの前でスマホを置いていかないようにしよう。


「混みそうだから早めに移動しよ!」


 加奈はそう言うと、俺の手を引く。

 これをカメラで写したなら、映画のワンシーンのような光景だ。

 限られている青春の一ページが加菜で埋まる。


「カップルが目立つね」


「自撮りをするのにはいい時間帯だからな」


「他のカップルを見てるとなんかほんわかするよね」


「多分、俺達もそう思われてるよ」


「だよね」


「うん」


「だって、こんなに幸せなんだもん」


 言葉にできないくらいの幸せを嚙みしめている。

 この数週間で、自撮りをするカップルを羨ましく思っている側から羨ましく思われる側にまでなってしまった。


 全ては加菜のおかげ……水瀬も邪魔だけではなく協力もしてくれていた。まぁ、お土産くらいは買ってきてあげよう。

 あとは加菜のおすすめスポットで写真を撮って帰るだけ。楽しい思い出を持ち帰るだけだ。


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