第29話 怪しいシャッター音

 街灯に照らされた園内を歩き、しばらくするとお目当ての場所に到着する。


「よかったぁ~。あんま混んでなくて」


「穴場だなここ」


 写真が映えるスポットなんて絶え間なく人が並んでいると思ったが、俺達の他にはカップルが2組だけ。

 園内の中心にある湖の端にあるが、隠れ家的なスポットのここ。


「こんな場所、よく調べたな」


「調べたんじゃなくて聞いたんだよ~」


「友達にか?」


「ううん、お姉ちゃんだよ」


「……そうか」


 なーんか嫌な予感がするんだよな。

 景色が良くて映えるスポットなのに人が少ない。こんな穴場があるなら絶対に噂になっているはずだ。


 水瀬が偶然見つけて加奈に教えただろうけど、なんか裏がありそうだ。


「人が少ないうちに早く写真撮っちゃお」


 辺りをキョロキョロすると、加奈は俺の腕に抱き付きスマホを構える。


「そうだな、早めに撮って早く行こ」


 向けられているカメラに2人揃ってポーズを決める。何枚か撮った後に、写真を確認すると満足そうな表情を浮かべる加奈。

 少しだけ景色を堪能して帰ろうとしたのだが、


「ねぇ、なんかシャッター音しない?」


 加奈はコソッと俺の耳元で呟く。


「……確かにするな」


 よく耳を済ませると、どこからか絶え間なくシャッター音が聞こえる。

 周りのカップルは自撮りをしているわけでもなく、ただイチャついているだけ。景色を撮りに来ている人もいない。


「なんなんだろうこの音、ちょっと怖い」


 その音を不審に思う加奈は、ぎゅっと俺に身を寄せる。


「怪しすぎる」


 俺が想像していることが的中しているかもしれない。となると、どこかに近くに潜んでいるはずだ。1人、いや2人。

 くまなくあたりを見渡す俺。あらゆる物陰や木の陰に目を凝らすが、特にそれらしき人物は見当たらない。


「よし、逃げよう」


 と、加奈の手を引っ張りその場を後にしようとするが、俺の足が止まる。

 ふと視界に映ったゴミ箱。そこからカメラのレンズが反射しているのが目に入った。


 嫌な予感が的中してしまった。見つけたなら、現行犯で捕まえてカメラを奪おう。

 とりあえず撮られていた写真を完全に削除しよう。話はそこからだ。


「おいそこの――」


 ゴミ箱の方を指さしながら声を張る俺であったが、


「ちょ、押さないでっ……痛ったぁ」


「何やってんですか! これじゃ見つか……」


 犯人は自分から姿を現した。

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