第27話 最高の一枚


 不安が拭えたところで、目の前に立っている加奈をジーっと見る。


「ポップコーンにチュロスに、ターキーレッグ……めっちゃ買うな」


 両手は購入したもので埋められ、額には先ほどまでなかったキャラクターサングラスまでかけてあった。


「色々目に入ったからつい……」


 テヘっとお茶目に舌を出して自分の頭を撫でる。


「ちゃんとポップコーンバゲットまで買ってるし」


「そうこれ期間限定だから」


「完全装備になったな。めっちゃ楽しんでる人の出来上がり」


「だって楽しんでるんだもん。ていうか、どう? 可愛い?」


 手を広げて前かがみになりポーズを決める加奈に、


「可愛すぎる」


 と、俺は即答。

 こんなの遊園地デートの彼女の理想像すぎる。


 無邪気にはしゃいでグッズを身に着けるなんて可愛いの権化だ。

 首から下げているポップコーンバケットが一番俺の癖に刺さる。

 この場所でしか見れない最高の姿。帰るまでに目に焼き付けておかないと。


「やったね。しかもお揃いにしようかと思ってもう一個別にバケットとサングラス買ってきたんだよ」


 ベンチの横に置いていた袋から取り出すのは、加菜が持っているのと色違いのバケット。


「何がしたいか分かったよ」


「チュロスも色違いで2本。ベンチで2人きり……」


 二ヤっと加菜は笑みを浮かべる。


「俺達そんなバカっプルみたいだったっけ?」


「バカっぷる言うな! ただの思い出作りだし!」


「傍から見たらどう見ても……」


「うっさい! 壮馬は撮りたいの? 撮りたくないの?」


 小首を傾げてそう俺に聞いてくるが、答えなんて決まっている。

 加菜が準備万端で内カメにセットしていたスマホを取り上げると、そのまま斜め45度で自撮りをする。


「あ、ちょ! なんもしてないのに撮らないでよ!」


「盛れる角度では撮ったぞ?」


「そうゆう問題じゃない! 髪の毛とか、手にどう物を持つかとか色々あるでしょ!」


「変わらんだろ」


「変わるわ! それに絶対可愛く撮れてないし……!」


 フンっとそっぽを向きながら、俺からスマホを取り上げる。

 問答無用で撮った写真は消されると思ったが、画面を見た加菜の手は止まる。


「どうした、盛れてなさ過ぎてやばかったか」


 苦笑しながら言う俺に、


「いや……その逆すぎて自分でもびっくりしてる。最高過ぎるよ」


 目をキラキラとさせる。


「ほーん、どれどれ」


 加菜の絶賛度合いに気になった横からスマホを覗き込む。

 自分が予想以上に盛れているから言っただけだと思ったが、それは間違いだった。

 写真自体は少しブレてはいるものの、それが場の躍動感を表している。


 表情なんてキメ顔ではないし、どちらかというと変顔に近いかもしれない。


 けれど、今日撮ったどの写真よりも、俺達は楽しそうであった。




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