第22話 今日は2人のはず……?
五月雨という美少女姉妹の推しが加わってから一週間程が経過した頃。
「……週末ってこんな疲れてるものだっけ」
俺はどっと疲れが回っていた。
「五月雨ちゃん、学校に居る時は凄い寄ってくるもんね」
横にいる加菜は、俺を気遣って肩をさする。
クラスメイトなどにバレないように、学校では隙をついて加菜と一緒にいるのだが、勘の鋭い五月雨は、何故か俺達を見つけてはついてくる。
もちろん、水瀬が居る時も変わりはない。
お昼ご飯、登下校、休日だって、どこからともなく五月雨は俺達の前へ現れた。
これでも案外、加菜との2人の時間があったことが不幸中の幸いだ。
とまあ言ったものの、学校では五月雨の隙をついて2人になったり、休日はお互い空いている時に水内家にこっそりと行ったり、最初の頃にあった2人きりになる時間がないという不安はない。
水瀬の方も気を遣ってか、一緒にいるのは登下校とお昼の時間だけ。休日はたまについてくるくらいで支障はない。
五月雨もしつこいが、節度は守っている。加菜が注意すれば直ぐに身を引くし、事前に報告すればデートの時もついては来ない。
その代わりに報連相は必須だが。
この一週間、可もなく不可もなく、充実した毎日を送っていた。
そして今日、前々から約束していた遊園地デートの日。
早朝から集合して電車に乗り、着いたのは夢の国。
事前に持っていたカチューシャを被って、俺と加菜は準備万端だった。
「やっぱ人は多いな……これはまた疲れが溜まりそう」
「んね。でもとことん楽しむよ今日は!」
開園前のゲートに連なる行列の中に、俺たちの姿はあった。
朝4時起きというのにも関わらず、加菜は元気いっぱいだ。俺は楽しみで寝られないという子供みたいな寝不足と、日頃の疲れから体力がないというのに。
加菜も五月雨の相手をしているから、多少なりとも疲れているだろうに。
流石JK、規格外の体力の持ち主だ。
「今日は2人で来れてよかったね」
手を繋いでいる加菜は、もう片方の手で髪をかき上げながら言う。
「これでもかとあの2人に言ったのが聞いたんだろうな」
「私、3回くらい言ってやっと聞いてくれたもん」
「水瀬はいいとして五月雨がな」
「制服デートしてる先輩が見たいって聞かなかったもんね~。まぁ制服で来なかったけど」
「私服の方が新鮮で俺的にはいい」
「それって、可愛いってこと?」
腰を曲げ、俺の顔をニヤニヤと覗き込む加菜。
「あぁ可愛いぞ。宇宙一可愛いね」
ここで照れるとなんかイジられそうなので、負けじと俺も加菜を褒める。
「んっ……ありがと」
「ホント、可愛いな」
「もういい……」
「あれ? 言って欲しいんじゃないの?」
「今はもういいの! また、後でならいいけど……」
「いや、可愛いな」
「だからぁ~!」
こんなイチャイチャも、2人の時にしかできない特権だ。
あの2人が居たら水瀬には茶化され、五月雨には羨ましいと邪魔される。
しかし、今日のデートにお邪魔虫はいない。
絶対にこのデートを楽しんでやる!
――
そう思っていたのだが、この時、既に後ろの方から視線を向けられていたのを、まだ俺たちは知らないのであった。
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