第21話 後輩参戦
「ま、まぁとにかく! 推してくれてることは私達凄く嬉しいし、これから推してくれてていいけど、壮馬とのことは好きにさせてほしいな?」
両手を合わせて可愛くお願いしてみる加奈。
「こ、こんな顔でお願いされたら……断れるわけないっ! けどモヤモヤするぅぅぅ!」
そんな顔を向けられた五月雨は、自分の心と葛藤していた。
「それに本当に推している人って、推しに不祥事があっても、彼氏ができても、推し続けられる人のことを言うと思うんだよね」
「ほぇ?」
「どんなことがあっても私はこの人が好きだ! っていう気持ちを持っている人が真のファンってことだよ」
「そ……そうですよね」
的確なことを言う加奈に、俯きながらも五月雨はうなづく。
この発言、全国の推しがいる人たちに聞かせてあげたい。
この言葉が刺さる人がどこかに居るはずだ。
目の前にいる人にも刺さっているようだし。
「俺も加奈をどうこうするつもりはないから安心していいぞ。たぶらかしたりは絶対にないから」
不純な気持ちなどは全く持ってない……とは言い切れないが、エッチなんかは恋人と愛を確かめる行為だから必要不可欠とまで言える。
「俺も加奈のことがちゃんと好きなんだよ。五月雨は推しとしてだけど俺は恋愛的な意味で。でも、大切にしたいっていうのは俺達同じだから」
本心を口にする俺に、
「案外真面目だ、この人」
と、五月雨も関心の眼差しを向けてくる。
ちゃんと気持ちが伝わってくれたなら何よりだ。
五月雨も話せば分かってくれるし、最初の印象は強気で物分かりが悪そうだったが、いい子なのかもしれない。
「分かりました。加奈先輩とこの人がお付き合いしていることに関しては、もう私からは何も言いません」
ゆっくりと立ち上がり、服を掃う。
やっと一件落着と思い、安心して顔を合わせる俺達3人であったが、
「ただし! 条件があります!」
胸を張り、ビシッと人差し指を立てる五月雨。
「まだめんどくさくなりそうだ……」
「なんかドラマみたいだね」
「ラブコメでよくある展開だよね」
「お前らよくこの状況を楽しんでられるよな」
ポジティブなのは大事なことだが、もっと危機感を持った方がいいぞ?
何を言われるか分からないからな。変な要求をされかねない。
「それで? 条件ってなんだ?」
あらゆる事を想定して覚悟して聞く俺であったが、
「先輩達の傍に私を置いてください!」
驚くような内容ではなかったものの、よく考えると面倒な条件なことに、水瀬も加奈も俺も、額に手を当てるのであった。
こうして、引っ付き虫の姉に加わり、2人を推している後輩も参戦した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます