第16話 可愛さが渋滞している
お昼を食べ終わり、午後の授業。
眠気に襲われながらも、なんとか生き抜き放課後を迎えていた。
その間、加奈とは特に恋人のようなこともするわけでもなく、友人と居るときは変わらず友達として接していた。
水瀬とも廊下ですれ違ったりはしたものの、特に会話もなかった。
ただ、女友達と天使の方な微笑みを浮かべて話している姿を遠目に見て鳥肌が立った。
午後3時過ぎ。下駄箱に集合し、カラオケ気分でウキウキになった俺達。
「今日は喉枯らすまで歌うぞぉ!」
「壮馬くんの歌聞きたいから私はそれ目的で行くぞぉ~! とか言いつつ私も喉枯らすまで歌うぞ~!」
いつもに増してテンションが高い2人を見て、女子高生のカラオケに対しての熱意は凄まじいとつくづく思う。
あくまで俺の妄想だが、週に4回くらい友達とカラオケに行ってはフリータイムでドリンクバーを頼み、はっちゃけてるイメージ。
「俺は程々に歌うかな」
横で靴を履きながら、ボソッと口にする俺。
過度に期待をされてるから歌いづらいな。同級生にうまいと言われるくらいで、決してプロ級なわけではない。
だからこそ、歌って思ってたより下手とガッカリされても困るから、程々に歌うことにしよう。
程々に上手い程度に。
「最初くらい2人で行きたかったけど」
さりげなく俺の隣に来ると、ボソッと耳元で加奈は囁く。
「あ、まぁ……今度2人で行こうな」
「露骨に照れられると流石に私も恥ずかしいんだけど……」
顔に出る俺を見て、加奈もボッと顔を赤らめる。
不意打ち過ぎだろ……急に来られるとドキッとしてクールに受け取ろうとしてもどうしても顔が赤くなってしまう。
それに、自分で言って恥ずかしがってる加奈……可愛すぎる。
絶対に友達だったことに見せなかった表情。新鮮で、慣れていないのもまた可愛い。
美少女の照れ顔はどうしてこんなに可愛いものなんだろうか。
可愛さが渋滞して俺の脳内が加奈で一色になってしまう。
「何隠れてイチャイチャしてるんだよぉ~」
このやり取りがバレないわけはなく、ムフーっと笑みを浮かべながら、水瀬は俺達の間に入ってくる。
……恋人を楽しむのは2人きりの時にしよう。
というか、その前に2人になれる空間に行かなくては……
となると、マンガ喫茶のペアシートかあとは……ホテル……になるよな。
彼女を横にして、そんな童貞全開な妄想をしていると、
「ちょっとそこの3人! 待ってください!」
突然、後ろから大きな女子の声が聞こえる。
どうやら俺たちを呼んでるらしい。
咄嗟に振り向くと、そこには黒髪ロングの小柄な女子がこちらを睨みつけながら仁王立ちをしていた。
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