第14話 ……それ以上言った方が怒るよ


 彼女が出来たとて、学校生活は何も変わらなかった。

 加奈と付き合ったことを大っぴらに見せびらかすわけでもなく、こっそりと知り合いに言うわけでもない。


 登校中に見られて不思議と思われているかもしれないが、現時点で誰にも騒がれていないので良しとしよう。

 まぁ俺としては、バレたところで誤魔化したりはしないし、色々な人から質問攻めに遭うかもしれないが、そこまで気にはしない。


 そうしてごく普通の生活を過ごし、時刻は昼休みとなっていた。

 集まるのは、誰もいない空き教室。


 お弁当を持参した俺達3人は、机をくっつけて座っていた。

 俺と加奈の席は隣で、向かいにはニヤニヤとこちらを見る水瀬。


「……食べにくっ」


 そんな視線を向けられていて、ご飯が進むわけもなく、箸でご飯をつまみながら俺は静止していた。

 こんなご飯を食べにくい状況生まれて初めてだ。


 横にいる加奈も眉を顰めてるし。この姉……おしとやかなキャラを貫いてもらいたい。

 その方が俺達にも周りにも都合がいいことだらけになるはずだからな。


「お2人さん、学校でイチャイチャしてないみたいだけど? すれ違った時ただの友達みたいに接しててお姉ちゃんガッカリしちゃったよ」


 しゅんと肩を竦める水瀬。


「私たちは別にひけらかすタイプじゃないし~」


「え~嘘だぁ。この前壮馬くんが帰った時、『壮馬好き過ぎて無理……どっちも初めてだったからなんか凄くて……またシたい……』とか私に惚気て来てたじゃん~」


「お姉ちゃん……何言って……」


「隠さなくてもいいってぇ~。どうせボロが出るんだからぁ」


「そうゆうことじゃないから! なんで壮馬の前で言うわけ! 非常識すぎない⁉」


「伝えなきゃ好きって分からないからいい事じゃんよぉ」


「お姉ちゃん、それ以上言ったら怒るよ」


 ムスッと半泣きのまま水瀬の肩を掴む加奈。

 そのまま俺にも恥ずかしさと怒りが混じった複雑な表情を向けられるが、


「……なんか、うん。ありがと」


 どう反応すればいいか分からない。

 裏で言われているのは舞い上がるくらいに嬉しい。だからこそ、変なテンションで加奈に絡むのはよくないし、俯いて恥ずかしがるのはまた違う。


 微妙な反応しかできなくて馬鹿にされても何も言えないが……つい最近まで童貞で女子とも絡みもさほどなかった俺にはこれくらいの反応しかできない。


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