第13話 お姉ちゃん、キャラ徹底してるから
「一緒に登校ってなんか新鮮だねっ」
「人生勝ち組って感じがして実に気持ちがいい」
水内姉妹に持ち帰られてから数日後。
休日が終わり、俺と加奈はカップルらしく駅で待ち合わせをして一緒に登校していた。
週初め、いつもは学校になんて行きたくないと家から出る足が重く憂鬱な気持ちで迎えていたはずなのに、今日は違う。
朝起きるときも、家を出るときも、すべてが清々しい朝だった。
彼女が出来ると人生が楽しくなることを朝から俺は痛感していた。
それとあの日、ちゃんとパンツが乾いていたのが情緒を保っている。
もし加奈にパンツを脱がされた時にシミがあったら、完全に引かれ、俺の心もアソコもガン萎えだったからな。
「初々しくていいねぇ~」
ウキウキな様子で俺たちの前を歩く水瀬。
「お姉ちゃん。今日はついて来ないでて言ったのに」
今にもスキップしそうなくらい足取りが軽い水瀬を見ながら、加奈はプクリと頬を膨らませる。
これまで、加奈と水瀬は毎日一緒に登校していた。
しかし、俺という存在が加わったため、必然的に水瀬は邪魔な存在になってしまう。
別に、俺は水瀬が居ても居なくてもどちらでもいい。
加奈と2人なら、手を繋いで仲睦まじく登校できるし、水瀬がいてもそれはそれで美少女姉妹と一緒に居るという優越感に浸れる。
「今日は加奈のボディーガードになるからね。彼氏持ちの可愛い子に男を近寄らせないようにちゃんと守らなきゃ」
フンスと鼻を鳴らす水瀬に、
「必要ないから! これまでも全部自分で断ってるから大丈夫!」
「それに頼もしい彼氏も横にいるしね」
「まぁ……ね」
「はい可愛い! その表情いっただき~」
「ちょ、お姉ちゃん!」
スマホで赤くなった加奈の写真をパシャリ。撮られた加奈は、急いで水瀬のスマホを取り上げようとする。
仲良すぎこの姉妹は。
毎日一緒に登校しているのも納得がいく。
そりゃ、妹が急に彼氏ができて一緒に居てくれなくなったら悲しいものだ。
しばらく歩くとチラホラと同じ制服を着た生徒が見え始め、途端に急に水瀬は静かになる。
そんな水瀬を見て不思議に思う俺であったが、
「お姉ちゃん、キャラ徹底してるから」
と、耳打ちをしてくる加奈。
そうだった。
学校ではおしとやかキャラなのを忘れていた。急にスッと表情を変えるものだから多重人格を疑うところだった……危ない危ない。
「じゃ、加奈、壮馬さん、またお昼休みに」
正門の前に着くと、軽く会釈をした水瀬はそのまま下駄箱へと向かった。
「今思うと徹底してたんだな」
「女優になれるくらいキャラを演じてるよ、お姉ちゃんは」
はぁ、とため息をつく加奈。
俺だって、ナンパの件がなかったらあの姿しか見る機会がなかったわけだ。
素を見てしまうとおしとやかなのが不自然で仕方がなくなる。
でも、学校でモテるのはおしとやかな水瀬であって、おしゃべりで妹大好き人間の水瀬ではない。
本性を知ったら水瀬のことを好きな男子はどう思うのだろうか。
なんか、男子が騙されてるみたいで可哀想に思えてくるな……
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