第12話 任務は遂行されたからね

 向き合う俺達は、初々しく顔を真っ赤にしていると、


「さて、カップルのお邪魔にならないように私は図書館で勉強でもしてくるかな」


 サッと座布団から立つと、満足気な顔をしながら言う水瀬。


「お姉ちゃんここにいないの?」


「私の今日の任務は遂行されたからね」


 最初から俺たちをくっつける目的で家に連れ込んだのかよ。

 策略家なのか、行き当たりばったりなのかは分からないが、どちらにしても水瀬の方が一枚上手だった。


「だからって別にどこか行かなくても」


「気まずいから加奈は行かないでほしいんでしょ? でも私が家に居ない方が加奈と壮馬くんも都合がいいんだよ?」


「なんで?」


「ここに居ても、リビングに居ても、声と音と振動は伝わってくるからね」


 ニヤッと見透かしたような笑みを浮かべる。

 そうゆうことか。


 どうせこのまま俺と加奈がエッチなことをするだろうと思っているから気を利かせているのか。

 ……無駄な気遣いだよ! 堂々と言われると逆に気まずくなるわ!


 そもそも、このままスる流れになると思うのか?

 そう思いながら加奈の方に視線をやるが……うん、完全にヤるな。


 だって目の前に準備万端の人がいるわけだし、俺も水瀬が居なくなったら理性が崩壊する。


 ここは素直にありがとうと言って出てってもらう方がお互いの為か。

 水瀬だって、妹の喘ぎ声なんて聞きたくないだろう。いや、聞きたいけど我慢してる可能性の方が高いな。


「お、お姉ちゃんのバカっ!」


 言葉を理解した加奈は、羞恥に顔を染めながらポカポカと水瀬の肩を叩く。

 姉は俯瞰して言っただけだぞ加奈さん。この状況だけを見れば水瀬が正しい。自分から下着姿になったんだから恥ずかしいのは自業自得。


「あとは2人でごゆっくり~」


 加奈の手をどかした水瀬は、そう言って部屋から手を振って出て行ってしまった。

 ものの数秒で玄関のドアが開く音が聞こえ、


「避妊はするんだよ~」


 と、余計な一言を言い残すと、そのまま家の中には俺と加奈だけになった。

 シーンと静まり返る家には下着姿の彼女と、立派になった息子を前かがみになりながら隠す俺。


 そんなカオスな静粛の中、加奈と目がある。

 どことなくトロンとした目は、今にも襲って欲しいと訴えているように見えた。

 ……ダメだ、理性が無くなりそうで幻覚まで見えてきた。

 しかし、もう気にすることなど何もない。


「じゃぁ、そうだな……」


 改まって言うのが恥ずかしく、頬をかきながら言う俺に、


「……シよっか」


 と、加奈は体を密着させてくる。

 そのまま流れるように加奈の下着をずらし、ベッドへ移動すると、甘い口づけを交わした。


 こんな時にも『パンツもう乾いてるよな』という不安が頭の片隅にある俺であった。


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