第11話 夢のような現実

「ねぇ壮馬」


 ホッと胸を撫でおろす加菜は、改まった顔をする。


「どうした? もう襲われかけるのはごめんだぞ」


「そっ! そんなんじゃないから! ちゃんと真面目な話!」


「ならいいんだけど」


 落ち着いたところで俺を押し倒して……という展開もあり得なくないからな。

 なにせ、あまり触れないでいたが加菜は下着姿だ。


 俺が少し下を向けば、そこには迫力のある双丘がそびえ立っている。

 乙女座りをしているのも、完全に男の脳を破壊しに来ているし。

 逆に俺が押し倒したい気持ちで一杯いっぱいだ。


 理性を保てているのは、隣に水瀬がいるから。

 もし2人きりになったら俺は雄と化すかもしれない。

 既に俺の息子ははち切れそうなくらい元気いっぱいで準備万端……いや、もう発射寸前の限界値に達している。


「それで? 何か話があるんじゃないのか?」


 加菜の谷間に目がいきそうになるが、必死に我慢し、加菜の顔を見ながら言う。


「あのさ、なんか流れでこうなったけど……本当に私でいいの?」


「何がだよ」


「あぁ~もうっ! 分かってるくせに言わせないでよっ! ……意地悪なんだから」


 この反応を見るに、『本当に私と付き合ってくれるのか』という意味だろう。

 もちろんOKだし、既に加菜には伝えている。


 しかし、女子というものは安心感が欲しいため、2度でも3度でも言葉にして伝えてほしい生き物。

 アニメで学んだ知識……案外役に立つな。


「それでどうなの? ちゃんと真剣に私と付き合ってくれるの……?」


 乙女全開の上目遣いで俺を見つめる加菜。

 その殺人級の眼差しと耳がとろけそうな甘い声に、


「んっ……そりゃ、ちゃんと付き合うよ……俺でよければ是非」


 不意に声が漏れてしまう。

 ヤバい……雰囲気もあるし意識しているからか、加奈がいつもより何倍も増して可愛い。


 あまり異性として見ないようにしていた俺だが、もうその必要がなくなった今、フィルターの掛けられていない俺の目に映るのは、正真正銘乙女の加奈の姿。


 よく友人から『よく加奈みたいな美少女と一緒に居て好きにならないよな』などと言われていたが、今になってその言葉の意味がよく分かる。

 そんな、学校でも一目を置く美少女が俺の彼女。


「……痛いな」


 夢ではないことを確認するため、自分の頬をつねってみるが、確かに痛い。

 これは紛れもない現実だ。


 夢のような現実。


 ナンパ男達に感謝してやらないとな。あの時に2人にしつこくナンパしてくれてありがとうってな。


 パンツは犠牲になったが、それを代償に一生大切にするものができた。

 布一枚のように変えられない、価値も付けられない、ものすごく大切なもの。

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