第9話 ずっと、ずーっと


「お姉ちゃん……」


「壮馬くんだってちゃんと伝えれば真摯に受け止めてくれる人だと思うよ。少なくともお姉ちゃんはそう見えた」


「そう……だよね」


真剣な眼差しをする水瀬に、加奈は気持ちを堪えるるようにぎゅっと手を握る。


「何か他の理由があるのか?」


思ってみれば、ただのお礼だけで加奈がここまで体を張るのはおかしい話であった。


一緒に遊んだ時なんかは、何かお礼すると言われるとコンビニでスイーツを買ったりジュースを買ったりするだけ。


同級生の男子の前で下着姿になるなんて他の何かがない限りあり得ない。


シーンと静まる部屋の中。

聞こえるのは、外から聞こえる通行人の話し声と、真横でなる加奈の心臓の音。


「私、私ね……?」


加奈はそっと俺の手を取ると、


「ホントは壮馬のことがずっと好きだったの!」


今にも涙が溢れそうで、そこに踏み込んだら壊れてしまいそうな表情をしていた。


「……嘘、だろ……?」


思いもしなかった事実に、俺は唖然してしまう。


こんな感動的な展開になるとは思ってなかったぞ俺。


涙腺が刺激される展開に無駄口をはさむかもしれないが、加奈のことだからもっと不純な考えで行動していると思っていた。


ただ処女を卒業したいから、手軽に捕まえられそうな俺を狙ったみたいな……


「嘘じゃない! ずっとずーっと私は壮馬のことが好きでした……」


しかし、加奈の表情を見れば一目瞭然。

純粋な気持ちをそのまま俺にぶつけている。


「よく私にも相談してくれてたから本当だよ、壮馬くん」


水瀬も、加奈をフォローするようにそっと呟く。


「加奈から言われるとは思わなかった……俺」


親しい友達という感覚が強いから、恋愛感情にはお互い発展しないと思っていた。


異性の友達にしては、それ以上の関係に見えなくない俺達。


ここまで仲がいいと、恋人にならなくても、という感情が出てくる。

その方が平行線で何も心配がいらないからな。


でも……俺も好きと言われれば好きかもしれない。


異性でここまで仲良くしてくれている女子は加奈以外いないし、たわいもない話を永遠とできるような存在なんて唯一無二だ。


この際いい機会だ。自分の気持ちにもケジメをつけないといけない。


だから俺は、


「加奈……俺も好きだ」


女子に言わせてばかりなのは、男としてのプライドが許さない。


ナンパを助けるよりももっと、男を見せないと自分を許せない。

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