第8話 私の体に興味がないってわけ⁉

「おいおい話の展開が早すぎるぞ⁉ 俺はまだ何も――」


「いいから、これは『お礼』なんだからありがたく受けっとっちゃいなよ」


 さらに俺を誘惑するように、水瀬は甘い言葉をかけてくる。

 このままだと雰囲気に飲まれてしまう。水瀬の言葉の誘惑と目の前で下着姿になっている加奈に俺も理性がいつまで持つか分からない。


「あの水瀬さん……性格変わってません……?」


 話を逸らそうと咄嗟に口にするが、ふとそう思う。

 おしとやかなキャラから逆転して、肉食系女子になってる。

 今まで思っていた水瀬の想像が一気に崩壊してしまった。

 指摘された水瀬は、一瞬我に返り、


「こう、妹と居る時というか、慣れた場所にいるといつもこんな感じ……です」


 と、ボっと顔を赤くして呟く。

 にしても人が変わりすぎだ。

 普段の姿はキャラを作っているということなのか?

 ある意味ギャップ萌え。


 清楚な人が、裏では肉食だったなんて刺さる人には刺さる話だ。

 そんなやり取りをしている俺達を見ていた加奈は、


「私、このままだと恥ずかしくて死にそうなんだけど」


 相変わらず赤面しながら、体をくねくねとさせ落ち着かない様子でいる。


「それよりお前の姉の変わりように驚いたわ」


「なっ……! それって私の体に興味がないってわけ⁉」


「んなこと一言も言ってないだろ! まじまじと見たらただの変態じゃんか俺!」


「この際だからじっくり見なさいよ! せっかく私頑張ってここまでしたんだから!」


 被害者なはずの俺なのに、何故か逆ギレされてしまう。


「これが私たちが考えた精一杯のお礼なの……だから受け取ってくれなきゃヤダよ……」


 徐々に俺に迫ってくる加奈。

 火照る体を密着させ、ついには俺の手を自分の胸へと当ててきた。

 今にも感情が爆発しそうになった俺であったが、必死に理性を保つ。


「……こうゆうのは好きな人ととか大切な人とするもので、お礼っていう軽い気持ちでやるのはどうかと思うぞ……」


 スーッと深呼吸をすると加奈の手をそっとどけ、目を見て話す。

 俺だって本心を言うと、今すぐ襲いたい。

 こんだけ迫ってきた女子を拒む理由なんて一つもないし、むしろ嬉しいまである。


 しかし、性欲に支配されるほど俺は穢れてはいない。

 第一に加奈は大切な友達だ。軽々しく体を許してもこの先関係が崩れたら取り返しがつかなくなるかもしれない。


「気持ちは嬉しいし、俺だってめちゃくちゃに犯してやりたいよ。けど……お礼っていう理由ではできない」


 全てを含めて、俺はそう口にする。


「そっか……」


 思っていることを汲み取ってくれたか、加奈はゆっくりと俺から体を離す。

 ちゃんと伝わってくれたならいいのだけど。

 加奈の悲しそうな表情を見てそう思う俺であったが、


「加奈、この際もう言っちゃっていいと思うよ。なんでここまでするのかを」


 黙っていないのは姉であった。


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