第6話 変な意味はなくて……

「壮馬さんは本当に加菜と仲がいいんですね」


 煩悩と戦っていると、ちょこんとクッションの上に座る水瀬は話し始める。


「それなりに関わりがありますからね」


「私も加菜からよく話を聞くから仲がいいんだろうなーって」


「え、なんの話です?」


「がっ、学校生活の事だよ! うん」


 ビクっと体を跳ね上がらせると、早口で答える水瀬。

 なんか怪しいぞ。


 一体この姉妹はなんの話をしているのか。ここまで分かりやすく反応されてしまうとこちらも気になってしまう。


「でも特別仲がいいってわけではないですよ僕たち」


「そうなんですか?」


「同じクラスで喋る機会が多いと言いますか、たまに遊びに行ったりもするけどめちゃめちゃ深いみたいな感じではないですね」


「加菜によくイジられてるのに?」


「それはお互いイジりあってる……ってなんで知ってるんですか」


「私もよく聞かされてるからね~」


 加菜は水瀬に俺をどんな風に話しているのか。イジっても怒られない都合のいいストレス発散道具みたいな扱いをされていてたら普通に萎える。


「だからさ、加菜に自慢されるものだから私も壮馬くんのこと気になってたんだよね~」


 テーブルに頬杖をつきながら、ジーっと俺の方を見る水瀬。


「そんな目で見られても……困るんですけど……」


 美少女にまじまじと見られてしまうと、俺も反応に困る。しかも頬杖をつくという男が喜ぶ体制で。


 不覚にも顔を赤くしてしまう俺を見て、意味深な言葉を言ってしまったことに気づいたか、


「いやっ……! その変な意味はなくて……人として気になってたというか、加菜が自慢する友達ってどんな感じの人なのかな~と思って……」


 一気に赤面すると、両手をブンブンと振り回し撤回する。

 俺も分かっていたのにも関わらず、変な反応をしてしまった。美少女に言われるとこうもドキっとしてしまうものなのか。


 水瀬も加菜も、無意識に男子を落しそうで心配だ。モテているのも無自覚な思わせぶり発言をしているからなのか? そうだとしたら自覚のない悪女すぎる。


「なんか、壮馬くんとは仲良く出来そうです」


 まだ頬はじんわりと赤いまま、照れくさそうに水瀬は言う。


「俺も、この姉妹とはなんだかんだで仲良くできそうです」


 思うところは色々あるが、それでも俺自身もこの2人一緒にいることを楽しんでいる。

 加菜も水瀬もあれだけモテて、男子を数え切れないくらい振ったけど、それでもな学校でトップを張るくらいの人気者だ。


 それも全部、こいつらの性格が良いからに違いない。


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