第5話 お持ち帰りされてしまった
「飲み物オレンジジュースでいい?」
「うん……なんでもいいよ」
「あ、私豆乳残ってたと思うからそれでよろしく~」
白を基調とした綺麗な部屋には、ほのかにバラの香りが漂っている。
ドレッサーには化粧用品、隙間から見えるウォークインクローゼットの中には、ワンピースやスカートなどがしまってある。
俺は、そんな初めて入る女子の部屋に、ベッドで硬直していた。
焼肉に行くはずだったのに、2人に連れて行かれたのは、駅からさほど遠くない水内家。
何かを取りに一度家に戻ったと思ったらそのまま家に入れられ、加奈の部屋でこうして3人が同じ空間にいる。
どうやら俺は『お持ち帰り』というものをされてしまったらしい。
……いやいやいや! なんで家に連れ込まれてるんだよ俺! 普通こうゆうのは逆じゃないのか?
男子が女子を自宅に連れ込むのが定番だ。
そこからあんな事やこんな事をするのが流れなはずなのに、立場が逆転している。
そもそも俺と加奈は仲の良いただの同級生。体の関係に発展するなんてあり得ない話だ。
それに水瀬もいるし、絶対にない。
この状況を考えたら想像できてしまう話なのだろうけど……いや、ないない。
「んじゃ、ちょっと待っててね~」
飲み物を取りに、加奈は自室から出ていく。
部屋に残された俺と水瀬の間には、気まずい雰囲気が流れていた。
なにせ、まともに会話をしたことがないからな。こうゆう時は天気の話でもすれば少しの会話くらいになるだろうと口を開く俺であったが、
「急遽家に連れてきてごめんなさい!」
先に口を開き、頭を下げるのは水瀬であった。
「そこまで気にしてないからいいですけど……なんで家だったんですか?」
何を理由に俺を家に連れてきたのか、そこが一番の疑問だ。
「焼肉は私が太っちゃうし……あとは、加奈と話してゆっくりお礼したいって話になって……」
「そのお礼の内容って決まってたり?」
「方向性は大体決まってます……行動に移すのは私と加奈の覚悟が決まってからです」
「は、はぁ……」
俺にお礼をするのになんの覚悟をする必要があるんだ?
ゆっくりお礼したいと、2人が覚悟を決めるくらいの何かをするとなると……これ、もしかして期待していいやつなのか?
俺の初体験、美少女姉妹との3Pになってもいいのか?
水瀬が太ってしまうと理由だけだったらまだ家に来たことはしょうがないとは思うけど、ここまで意味深な回答をされてしまったら俺の妄想が止まらなくなる。
もし俺が考えることと違うことが起きたら、ただキモい妄想を勝手にしている勘違い男になってしまうから、事が目の前で起きるまえまでは考えないようにしておこう。
でも、多少心の準備はしておかなくてはな。
何が起きてもいいように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます