第2話 似ている姉妹

 た、助かったぁ。

 パンツは犠牲になったけど命まで犠牲にならなくてよかった。

 ホント心臓に悪い。ヤンキーという人種に立ち向かうのは。


「柄にもないことをやると疲れるな」


 安堵のため息を吐きながら、加菜に声を掛ける。

 しかし、加菜の表情は固まったじーっと俺の方を見ていた。


「助けて頂きありがとうございます。えっと……壮馬さんで大丈夫ですか?」


 そんな加菜を見かねた水瀬はこちらに頭を下げる。


「壮馬で大丈夫ですよ、水瀬さん」


「みなっ……なんで私の名前を?」


「加菜からよく聞いてますから。それに学校でちょっとした有名人だし」


「私いつの間にか有名になってたの⁉ 変な理由だったら困る……」


「全然変じゃないので安心してください!」


 なんだかんだで、水瀬とはこれが初絡み。ほぼ初対面なのに変なことを言ってしまった。


 ほのぼのしく会話をしている俺たちの横には、相変わらずボーっとしている加菜の姿。


 石化したように瞬き一つしていない。

 ナンパされたショックで死んだが?


「加菜~? そろそろなんか喋れないとビンタするよ?」


「はっ! はぁ……ナンパ助けてくれてありがとう壮馬」


 姉に耳元で囁かれた加菜は、息を荒げながら俺にお礼を言う。

 流石姉だな。妹の扱いをよく分かっている。


「全然へーきだよ。たまたま通りかかっただけだし」


 嘘は言っていない。たまたまなのは事実だし。まぁ平気ではない、むしろパンツが大惨事になっている。


「でも意外だったな。壮馬にあんな男らしいところあるなんて」


「意外とは失礼な……」


「ヤンキーとかに立ち向かうキャラじゃないじゃん壮馬は。むしろ立ち竦んでチビってそう」


 ムカつくくらい的確のことを言ってくるな加菜は。

 もしかして俺、ズボンに染み出てたりしてる⁉

 バレないようにそっとズボンを触ってみるが濡れてはいない。


「でもカッコよかったです……助けてくれた時」


 じんわりと頬を染め、加菜に隠れながらも俺の方を見ながら水瀬は言う。


「そ、それはどうも……」


「んね! 私も惚れちゃいそうだったよぉ~」


「茶化すな」


「カッコよかったのは事実だけどね」


「んなっ……お前なぁ」


 不意に言われて、俺も顔が赤くなる。

 そんな俺を見た加菜は、小悪魔な笑みを浮かべながら、


「何照れてんの~? 可愛いんですけどぉ~」


 と、俺の脇腹を肘でつついてくる。

 髪がなびいた時にチラリと見えた耳が赤くなっていたのは気のせいだろうか。

 にしても、癇に障る奴だな本当に。……助けなきゃよかったかな。


 後ろに隠れている水瀬もクスクスと笑っているし、姉妹は笑いのツボの似るのか。

 どっちも笑顔が可愛いから何とも言えないのがさらにムカつく。


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