Human Of Life
@madomado1129
第1話
私の人生において、恋やら好きな人やら、そんなものができることはない。
それは、これまで生きてきた32年の歴史で自分が一番わかっている。
よく言う「逃げ」ではない。
アセクシャルでもない。
でも、わかっている。そういうものだ。
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この物語の主人公 安藤圭は時たまそんなことを自分に聞き、自分で考え、自分に答える。
なぜかはわからない。でも、思考をもってしまう。
今日は、夢の中で見たサラリーマンと初老の女性のひと夏の恋愛物語がめちゃくちゃ美しくて艶めかしくて瑞々しすぎて、目が覚めて悶絶していたところ、ふと我に戻ってしまった際に問い続けてしまった。
頭元にあるスマートフォンに手を伸ばし、画面をオンにすると時計はちょうど7:30を指して、大好きなRAISE A SUILENがカバーしている「劣等上等」がかかった。
圭は、アラームを止め、ベッドから身を出す。
スイッチボットで開くカーテンがちょうど開き始め、遮光カーテンのせいで暗かった部屋が次第に明るくなってきた。
鍵を閉めていた部屋の扉を開け、3階から1階にある洗面所に向けて階段を下りていく。
この家は、シェアハウスで戸建てをリフォームした建物であるため、何か用があれば3階の自室から1階の共用スペースまでいかなければならない。
これが本当にめんどくさい。本当にめんどくさい。
そんなに言うなら引っ越せっていうかもしれない。別に金がないわけではないし、給与だって少ないわけではない。
ただ、引っ越すのがめんどくさいので、引越さないだけだが。
どのめんどくさいをとるのかと言われたら・・・・。今は考えるのをやめよう。
身支度を整え、キッチンでコーヒーメーカーを使ってコーヒーを水筒に淹れて、自室に戻り、着替えて仕事に向かう。
ちなみにこのシェアハウスは今、圭しか住んでいない。正しく言うと、かれこれ5年以上住んでいるが、一緒に住んだことがあるのは最初の3年のみで、その時は6部屋中5部屋埋まっていたが、いろいろあって圭のみになった。
そういえば、オーナーである叔母が今度新しい人が入るからよろしくとか言っていたが、どんな人なんだろうか。人と一緒に生活するのが久々なのでちょっと緊張するな。
そんなことを愛車の一つ アヴェニス125で会社に向かいながら考えていた。
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圭は、ジャパンビールという日本の中でも1,2位を争う酒造メーカーの東京支店で営業として働いている。成績はあまり誇らしくないが一応社内で3年連続1位である。
出社して、自席につきパソコンの電源をつけてメールを確認していると、「おはよう」という声ともに肩をたたかれた。
「おはようございます・・・。伊藤マネージャー。」
「なんだよ・・・。朝からその返事は・・・。元気ないな。」
伊藤マネージャーというのは、圭の直属の上長で、1つ上の先輩である。お互いのいいところ悪いところを知っており、また頼りがいもあるそんな存在である。
「朝は苦手なんです。ところでなんの用ですか…?」
「いやな、今日10時から新しい発泡酒の企画会議があるんだが、ちょっと一緒にでてほしくてな…。」
「新しい発泡酒ってまた出すんですか・・・?」
「そうらしいんだよ。昨日マーケの同期が、『これどう思う?』って持ってきて一緒に吞んだんだが、それがちょっとな・・・。」
マーケというのは、マーケティング部のことで、ジャパンビールでは、花形部署の一つである。
「おいしくなかったと。」
「そこまでは言わないが、なんかこれが本当に今のはやりなのか?っていうなんとも微妙な味で。」
「そのマーケの同期の方はなんて言ってたんですか?」
「なんかな、『今の流行りを調査するとこういう味にはなるんだが、正直俺はいちジャパンビールファンとしておいしいとは思わない。』って語尾強めに言ってて。」
「なるほど・・・。要はその企画会議で『こんな中途半端なもん発売してどう営業せい』といえばいいということですか?」
「そこまで言わないが・・・。いやまぁ、そうだな・・・。」
「なるほど・・・。ちなみにその発泡酒ってありますか?今日バイクで来たので家帰ってから確認しようかと。」
「ああ、1ケースもらったから2缶ほど持って帰っていいぞ。」
と伊藤が自席に戻りながら机の下にある箱から2缶取り出し、圭に手渡す。
「ありがとうございます。明日感想言いますね。」
「ああ、ってかもう9:55だ。オンラインだけど、会議室とってるから一緒に受けてくれ。」
「あ、わかりました。どこの会議室ですか?」
「向こうのAミーティングルームだ。俺もう向かうから。」
「わかりました。すぐ向かいます。」
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その後、企画会議は1時間の予定が2時間に延び、まとまりがつかず、翌週に持ち越しとなった。
というのも、マーケティング部
Human Of Life @madomado1129
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