ぞっとする日の丸

ぞっとする日の丸

気づいたら僕は知らぬ土地にいた。記憶も曖昧だ。

旅行の際に飛行機事故に遭ったところまでは記憶しているのだが、そのあとどうやってここまで来たのかは私にはわからない。

他のだれが助かったのかも私には知る余地はない。

目の前には見知らぬ人が沢山。

顔立ちはアジア風ではあるものの日本かといわれるとわからなかった。

彫は深く、はっきりした顔立ちにも見える。

だが、しいて言うならそう、昔教科書で見た縄文人のような。

掲げられた国旗の真ん中が赤い丸をしていることで辛うじてここが日本なのだとわかった。

言葉も飛び交っているが、記憶混乱かよくわからない。

私が話しているのが正しい日本語なのかもわからない。

医師に聞いたとて医師の質問も答えもわからないので、私には意味をなさなかった。

幸い怪我の状況自体はさして酷いものではないらしく、歩けるようになるまでに時間はそうかからないらしい。

しばらく病院にてゆっくりと療養していれば問題はなさそうだ。

足には特に心配することはないようだったが、記憶障害と視力低下・色覚異常が残ってしまうようだった。

僕の目はかなり視力が落ちており、更に白が緑に見えるようになってしまったのだ。

壁がうっすら緑に見えたりするような…

病院内は基本的には水色基調なため生活をする分には支障はないのが幸いだ。

僕の症状は色覚異常とでもいうのだろうか。白が緑、これだけがおかしく感じるのだ。

顕著な例として日本の国旗は白地に真ん丸な赤、そう僕は信じていた。

日の丸弁当だってそうだ。日の丸と称した梅干しが白いご飯の上なのが日本国旗に見立てられている。

しかし病院の玄関に掲げられた国旗は僕の目はどうしても白が緑に見える。

あぁ、僕は言語が分からない理由も白が緑に見える理由も気づいてしまった。

院内に無造作に置かれた地球儀の意味を知って。

日本語が通じない意味を知って。

青い空に散らばる白い雲を見て。

ここがバングラデシュだということに…