第2話 手作り弁当
とりあえず冷花から逃げ切れたと思う。あの後、俺はずっと走り、家に帰った。そして窓やドアは全て完全に閉じた。
ピンポーン。何度もインターホンの音が鳴り響く。怖くなった俺は玄関の前に行ってみる。
「夏輝…出ておいで、玄関の前にいるでしょ」
なぜ玄関の前にいることに気づいているのだろうか。考えると余計に怖くなる。
「ねぇ今すぐ出てきた方が良いと思うよ。私が何を持っているか分からないし危険だからね」
もしかしてナイフやバールでも持っているのか。もしそうだとしたら開けない方が良い。
足音が聞こえる。だんだんと小さくなってる気がする。気になった俺は思わずドアを開ける。そこには冷花がいた。後ろで手を組んでいる。何かを隠し持っているようにも見える。俺はドアを閉めようとする。
「ねぇ、なんでそういうことするの?」
冷花が家に入ってきた。後ろで手を組んで微笑んでいる。
「私が何、持ってると思う?」
俺は正直にナイフとかバールと答えた。
「酷い。私そんなことしないのに……私のこと、分かってくれないんだね。分かってくれるようにしないといけないなぁ~」
何か嫌な予感がする。ナイフなどではないなら何を隠しているんだろうか。
「それで何を隠してんの?」
聞いたら、冷花は微笑んだ。
「実は、夏輝のためにお弁当を作ってきたんだ。手作りだよ!」
手作り弁当を作ってくれる幼馴染なんて最高だ。しかしこの状況では最悪だ。何が入ってるか分からない。
「食べてくれるよね?」
かなり圧を感じた。椅子に座らされて弁当を開ける。中身はよくあるものだ。これなら食べれると思い、食べてみると、なんか不思議な味がする。
「どう美味しい?私の血が隠し味なんだけど……」
その瞬間、俺は普通に吐いた。冷花が俺をじっと見ている。
「ごめんね……」
珍しい。ちゃんと謝ってくれたんだよな。
「お弁当、美味しくなかった?じゃあ私の血だけ飲んでね」
全く反省の気持ちはなかった。それどころか、余計にヤバい気がする。冷花が自分でカッターで手首を切っている。その手首を俺の口元に付ける。血の味がする。
「美味しいでしょ?なんでそんな苦しそうな顔しているの?もっと飲もうね」
笑顔で言っているのが本当に怖い。俺は冷花の手首を振り払った。
「そっか~、私の血が嫌なんだね。なんで私と同じ気持ちになってくれないの?私は夏輝の血でも何でも飲みたいのに……」
背筋が凍る。なぜか視界が歪んで見えるような気がする。だんだんと視界が狭くなっていく。
「フフッ、やっと効いてきたね……」
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