クールな幼馴染を助けたらヤンデレ化したので逃げます

🪻夕凪百合🪻

第1話 ヤンデレ化

 少し開いた窓から入り込む風で髪が揺れているが気にせずに、教室の隅の机で誰とも群れずに本を読んでいるのは、俺の自慢の幼馴染の冷花れいか


 冷花は、いわゆるクール系女子と言われるような雰囲気だ。常に落ち着いていて、一人でも生きていける人。昔から変わらず、そんな感じだ。


 冷花の存在は何もない俺が唯一、自慢できることである。冷花と普通に話せる人は少ない。みんな見惚れたり、緊張して話せなくなるらしい。


「なぁ?お前、冷花と、どういう関係なん?」


 ヤンキーっぽい人に絡まれた。こうやって聞かれるのは、よくあることなので、もう慣れた。初めの頃は怖かったけど。


「別に特別な関係じゃないっすよ」


 俺は正直に答える。ただの幼馴染なだけだ。俺から冷花への恋愛感情とかはない。きっと冷花も同じように思っているだろう。


 放課後、俺はすぐに家に帰ろうとする。別にやることもないけど。人気のない道を歩いていると、珍しく人の声がした。それも知っている人の声……冷花の声だ。


「やめてください」


「ねぇ君、可愛いね~。俺と付き合わない?」


「興味ないです」


 冷花がナンパされて嫌がっている。ここで助けに行かないなんて理由はない。


「あの……冷花は、俺の女です!」


 助けようとして咄嗟に出た台詞がこれだった。冷花はこの台詞をどう思ったのだろうか。


夏輝なつき、守ってくれてありがと」


 クール系だが感謝などは、しっかりとする。


「やっと私を彼女だって認めてくれたんだね……えへへ……」


 何かを呟いていたが、よく聞き取れなかった。


 このまま一人で帰らせるのは危険だと思うので家まで送っていた。


「ねぇ1人で家に居ても暇だから私の部屋来て」


 俺は驚いている。昔は当然のことだったのに。冷花の家に入るのは7年ぶりだろうか。久しぶりにこの家に入ったが第二の実家のような安心感がする。


「夏輝、大好き」


 急に冷花が抱きついてくる。そして俺の服に顔を埋める。驚いた俺は、思わず冷花を突き飛ばした。幸い、突き飛ばした先はベッドだったので怪我はしてないはず。


「夏輝……酷いよ」


 泣いてしまったので慰めるために優しく頭を撫でようとする。頭の上に手を置いたら冷花に腹パンされた。


「痛い?痛いよね?でもね、私は夏輝に突き飛ばされてこれぐらい心が痛かったの。私と同じ痛みを味わってよ」


 少しにやけながら言う冷花が怖いので逃げようと思う。俺は扉に向かって走る。鍵はしまってないようだ。俺は靴を履き、玄関から逃げ出す。


 ――この日から冷花から逃げる日々が始まるとは思ってもいなかった。



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