【KAC20247】白も良いけど黒も良い

ぬまちゃん

好みはどれですか?

「ねえねえ、どれにする?」


 友達のA子は、商品だなから色違いのパンツを数枚持って、私にぐいっと押し付けるようにして聞いてくる。

 そんなの、私が履くんじゃないし、どれにしようと勝手じゃんと思ったから、一番右のパンツを指さす。


「ちょっと、B美。ふざけないで見てよ」


 A子は、私が指さしたぐんじょう色のパンツを振り回しながら声を上げる。

 可愛さよりも、ここは実用的なパンツを選ぶのが現代的な女子高生だよ、そう言ってにへらと笑おうとしたら。


「良いのではありませんか。ピンク色や赤色が可愛いって誰が決めたのかしら。ワタクシもB美さんの選択にはげしく同意してしまいますわ」


 下着売り場の女性ものパンツが並んでいる棚の向こうから、学年トップのちょっと変わった同級生女子がすっと顔を出す。


「ワタクシとしては、ピンク系より白を強くお勧めしますわ。しかも、女性の大切な部分を隠す布面積の少ないものではなくて、乙女の大敵、冷え性を防ぐ腰回りをしっかりとつつんでくれる形状がおすすめ、でございますわ」


「何言ってんのあんた。そんなことじゃ、男の子の注目を集められないよ。やっぱり大人の黒色、しかも布面積は最小で、細いひもで押さえるのがベスト!」


 ずれた黒メガネをずずっと鼻頭にもどして、古風な意見を展開していた学年トップの女子を押さえつけるように、ひゅるりと現れたのは、スポーツ万能で超が付くほど明るいクラス委員長の女子。


 彼女たちが現れたことでパンツの色選びを諦めたのか、A子は最初から自分で決めていたパンツを握りしめ一人でずんずんとレジに向かう。


 一人取り残された私に、学年トップと委員長はニコニコしながら詰め寄ってくる。


「それで、あなた何色になさるの? やっぱり白色のズロースよね」

「でで、あんたは何色にする? JKは当然黒色のひもパンツだよね」


 二人に詰め寄られた私が返答にこまっていると、


「何色だって、どんな形だって良いだろ。パンツは自分がはくものだから他人がとやかく言うもんじゃない!」

 

 わたしの目の前にある試着スペースのカーテンが勢いよく開くと、真っ赤な顔をした幼馴染のK君が、彼女たちに返事をしてくれた。


(了)

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