色神術
一陽吉
色神の巫女
──
「この時間にこのタイミングで現れるとは、貴女、私を
「ええ、そうよ」
「なるほど。その恰好、日本の巫女が着るもののはずですが、悪魔祓いもするというわけですか」
「正確には女の敵、全般ね。人間だろうと魔物だろうと女に悪さをする奴は仕留めるわ。あなたの場合、若い女の血を吸って一生消えない傷跡を残している。それは吸血鬼に咬まれた者の証として人生を狂わされることになるの。許されることじゃない」
「いやいや、むしろ誇りに思ってほしいですな。私に咬まれるということは、私に認められた美しい女性ということなのですから」
「あなたの解釈としてはそうなのね。だったら、私はどうなのかしら?」
「合格です」
「具体的には?」
「日本人らしい黒髪をボブカットにされているのがとてもお似合いですし、顔だちもアイドルに勝るほど素晴らしい。白い肌も清らかで上品さが感じられる。しかもスレンダーな体型ながら、女性らしさの象徴である胸がほどよい大きさで
「ふふふ。若い女を狙うご紳士さまだけあって、そういうところはきちんと見てるのね。そんなに褒めるくらいなら、私の血も吸いたくなったんじゃない?」
「それはもちろん」
「それじゃあ、試してみる? だけど、私に勝てたらね」
「左肩を出して見せての挑発ですか。いいでしょう。どの道、貴女を倒さねば私が滅びますし、貴女のおかげで美女のお預けを受けましたからね。その分、たっぷりいただきます!」
「!?」
「背後ががら空きですぞ!」
「鉄の色」
「ぐはっ!」
「残念でした」
「な、なるほど。貴女は水流使いなのですね。しかも操る水に属性を与えられる……」
「まあね。十か所以上刺されて痛いだろうから、早く仕留めてあげるわ」
「ま、まだ、です。私には、秘策がある。光よ!」
「?」
「ば、ばかな……。私の閃光が、こんなに小さく……」
「それじゃあ、豆電球だね」
「
「いいこと教えてあげる。それはあなたが弱くなったからよ」
「弱く……?」
「そう。だってあなた、これを見たでしょう? 我が
「む、胸元の、ほくろ……?」
「ほくろがなくても、谷間が見えれば男は注目しちゃうでしょう? それだけで女神は呪いをかけるのよ」
「女神の、呪い!?」
「そ。だから男は誰でも、わたしに勝てないの。詳しいことは自分で考えてみてね」
「私を囲む、水の壁。そして、この色は──」
「
「ギイヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤーッツ!!」
「服なんかと一緒に跡形もなくなったわね。来世では気をつけなさい。とくに、私みたいな格好の女にはね」
──男がいた場所に一瞥をやると、女は月の色をにじませながら、次の標的へと向かった。
色神術 一陽吉 @ninomae_youkich
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます