第5話 電脳少女 黒島クロ

エコーズ本部に帰った俺たち。ハクはカタギリ親子に会ったと伝える。

「あの一ってやつ…強いな……」

「あぁ。早く倒さなければ、危ない」

ハクはそう言いながら、右腕をアルハイムさんに見せる。

「この右腕、弾を装填してください。さっきの戦いで全て打ち切ってしまって…」

「分かった。じゃあ外すね」

アルハイムさんはハクの右腕の付け根部分のネジをドライバーで外し、思いっきり腕を抜く。

「じゃあ弾補充してくるからちょっと待っててね」

「ありがとうございます」

アルハイムさんは右腕を分解しはじめる。すると驚いた様子でハクに話しかける。

「あちゃ〜。シリンダーが壊れちゃってるね…。こりゃ交換しなきゃだ……」

「多分、あのとき黒騎士をシリンダー近くに生成し、壊したんだろうな」

そんなこともできるのかよ。まぁ奴も長いことその力を使ってきたんだろうな…。そりゃ使い慣れてるか。

「あ、そうだ。マサムネくんよ…私の紹介がまだだったな。私はこいつと同じ電脳少女の黒島クロだ。歳は2人と変わらないくらいで…」

「じゃあ、北宮高校にいるの?」

「高校なんて行っとらん」

「は?」

驚きのあまり、開いた口が塞がらない。

「じゃあ中学は…?」

「バカにしてんのか?さすがに行ったわ」

はぁ良かった。となぜか安堵する。

「…あとそうだな…。私はハクと違って武装類が最強だ!」

「……」

ハクはクロを見つめることなく、左手に持っているティーカップに入っている紅茶をすする。

「面白くないな…1号機は…」

「……」

2人の関係が一気に悪くなっている気がした。さっきまでの雰囲気はどこにいったんだ…。

「ま、まぁまぁ…」

「本当に君は何なんだ!君のそのテンションと言い…!腹立たしい!」

「……んだよ」

互いに睨みつける。ヤバいよぉ…。俺じゃあこの場をまとめられん……!

「私は君と一緒には戦えん!」

「同感だ。ノリが悪い奴とは仲良くなれん」

白宗さんはティーカップを机に置き、外へ出ていく。すると後ろに方から野太い声が聞こえてくる。

「追いかけないのか?マサムネよ…」

「あ、榊原さん?」

そう、この高身長でガタイの良い人はエコーズをまとめるリーダーの榊原さんである。榊原さん…優しくて良い人なんだよなぁ…って!そんなこと言ってる場合じゃない!

「お、追いかけてきます!」

俺は駆け足で外まで行く。外に出て、左に曲がった瞬間、白宗さんに会った。

「木城…追いかけてきたのか…?」

「うん……」

「同じ電脳少女として…私は彼女と仲良くやっていけるのだろうか…」

「…それはまだ分からないと思う。でも、目的は一緒だ。奴らを倒すという。じゃなかったら…さっき一緒に戦ってないさ」

「………」

白宗さんは下を向いたままだ。

「…だが戦いは遊びではない。彼女からは…本気を感じない。私は…私は……!」

「ちょっと、熱くなりすぎだよ。…熱くなっても意味がないよ。こういうときは仲間を大事にしなきゃ…」

「仲間……」

「白宗さんは1人でなんとかできるって考えすぎちゃってるんだよ。クロの性格上、仕方ない事かもしれない。でも彼女はせっかくできた電脳少女という仲間じゃないか。俺は2人とも信用してる…。白宗さんは?」

「私は……信じる。仲間と一緒に。そして……木城と一緒に…街を守り、奴らを倒す…!」

さっきまでの落ち込みようが嘘かのような目と声で俺に向かって言う。

「そうだね…!……あ、腕」

俺たちは彼女の右腕が無いことに気づく。周りには普通に人が歩いている。その人達は彼女の方をジロジロと見つめる。あ、変な感じに思われちゃってる?

「あはは…腕治してもらってるのだったな。この姿ではアレだ…戻るとしよう」

「…うん…!」

彼女は少し首を傾げ、笑顔で俺に言う。あぁ……やっぱり最高だな…。好きな人の笑顔が1番の栄養だ!俺たちはエコーズ本部へと…戻っていく。

ーーー続くーーー

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