第3話 親子襲来・ハク対一
あれから何日か経った。俺は彼女の本気の説得によって無理やりではあるがエコーズに所属することができた。そこから彼女と工藤さんからの熱い指導のもと、俺の強化プログラムが実施された。まずは基本トレーニングとして腹筋や腕立てなどの筋トレから。俺は体育の成績は良い方なので特別きついとは感じなかったが問題はその後だ。彼女が愛用している刀、黒赤刀(こくせきとう)を持つトレーニングがまぁキツイ。なんせあの刀はただの刀と全くと言っていいほど別物である。日本刀の重さは約1キロ。だがこの黒赤刀は約30キロにも及ぶ重さとなっている。30キロは電動自転車と同じ重さだそう。成人男性でも持てないと言われているものを高校生が持てるわけない。だが、そんな刀を彼女は片手で持っている。たとえ義手だとはいえ、おかしすぎる。筋電義手や義足を日常生活で使えるようにするには6ヶ月は必要らしい。まぁ彼女の場合10年もずっと義手義足なので、慣れたもんなのだろう。そしてもう一つの武器、Ⅱ-wayアサルト。これはアサルトライフル兼近接武器らしい。マガジン、ストックを伸ばしていない状態をアサルトライフル。マガジンを外してストックを伸ばしている状態を近接武器のアサルトソードと言うらしい。これはソードと言ってもいいのかアレだが、そこは気にしなくていいと工藤さんに言われた。このアサルトライフルは約4キロしかないため非常に装備しやすい。彼女いわく「これだけ使えれば良いほうだ」と言われた。でも…俺だって刀を持ちたい!刀なんて男のロマンじゃないか!
さっきの話はさて置き…。あの日を境に俺は彼女と毎日の街のパトロールもすることとなった。そして今日、とある事が起こった。
午後18時、高校付近にある北宮公園近くを徘徊していると目の前からただならぬ圧力を感じた。
「木城…下がれ。なにかヤバい…!」
「う、うん…!」
段々と俺の呼吸は荒くなっていく。何故だ…。呼吸を整えたくても…できない!?近づいてゆく足音。今にも空気に押しつぶされそうだ。
「………くる!」
「……」
目の前に現れてきた奴。それは三人組の男たちであった。まるで…親子のようだ…!ん?親子……!?
「どいて…くれないか?ねぇちゃん」
真ん中にいるでかい男が彼女にそう語りかける。
「……ッ!!………」
「んだよ…その目。俺ぁ喧嘩はゴメンだぜ?」
「………黙れ」
彼女のその一言はこの場を一気にピリつかせる。今までと…言葉の重みが違う。声のトーンがまったく違う…!
「お前……あぁ………あん時の女か。デカくなったなぁ」
「片桐雄二(かたぎりゆうじ)ぃぃ!!!」
彼女は名前を叫びながら右手に持っていた刀をその男に向かって差し込もうとする。だが。
「…言ったろ?喧嘩はごめんだって。それに…まだ俺の出番じゃねぇ…。ここはお前に任せた…一(はじめ)」
「はいはい」
彼女の刀はまるで蚊のように扱われていた。真ん中の男は刀を左手でいなし、左にいた男と場所を入れ替える。
「早い!白宗さん!ここは危ない!!」
「ハァ……ハァ………!」
「貴様が電脳少女とか言うやつか。我らの邪魔をしているようじゃないか…」
「何を言う!!貴様達が街の人を脅かしているからだろう!それに……私の家族を奪った…!」
そう、彼ら3人組が彼女の仇であった。今、俺たちの目の前に仇がいるということだ。そして気づけば他の2人がいなくなっていた。どこに行ったのかと辺りを探してみるが見当たらない。
「やったのは私ではない。父上だ」
「そんなこと関係ない!!お前は今!ココで倒すッ!!」
刀を構え、片桐一という男に刃先を向ける。だが、彼は動じない。刃先は一の心臓部めがけて走らせる。その刹那、一の胸から黒い何かが溢れ出てくる。それは地面に落ちるどころか、刀に触れようとしていた。そして黒い何かが黒騎士へと変貌していく。
「黒騎士ッ!?」
「無限(インフィニット)の騎士(ナイト)それが俺の力だ」
胸から出てきた黒騎士は刀をたどり、彼女の手にピタッと触れる。
「なぜ…胸部から黒騎士が…!」
「俺の能力は黒騎士を生成すること。貴様の刀が影となり、そこから生成させた」
「ッハ!」
彼女は黒騎士の手をはたき、距離を取る。まさかこの前の黒騎士も…こいつが…?
「じゃあ今まで出てきた黒騎士は全部お前のせいってことか?」
「正解だ、そこのガキ」
「!?…本当に……!クズな奴等だッ!!」
彼女は体制を立て直し、また刀で攻撃を仕掛ける。その刃は一の左脇腹めがけていた。刀が腹に軽く触れた瞬間、彼女の右手首ごとボロっと刀と一緒に地面に落ちていく。そして手がなくなった右腕を一の腹に近づける。
「フェイクだ。くらえ…45口径右腕部バルカンを」
そう言い放った瞬間、激しい銃声が街中に轟く。その右腕部バルカンは一の腹に直撃していた。だが、そんな簡単にやられない。その影から黒騎士を無限に生成し、なんとか耐え凌ぐのであった。でも最初の何発かは命中したようで、血を流していた。
「ぐうぅぅ!!貴様ァ!!」
「電脳少女を侮るでない……。我々は貴様らに勝つため、色々な策を練ってきている。そんな簡単にやられてたまるものか!」
「……やはり…貴様では俺たちに勝てるわけないんだよ……!」
そう言い放った瞬間、彼女の足元から多くの黒騎士が湧いてくる。黒騎士の小さな手が彼女の足をペタペタと触れる。
「クッ!離せ!!このぉ…!」
「もう…騎士の地獄からは逃れられん…!」
「よぉ…ハク。困ってるようだな」
聞き馴染みのない声が後ろから聞こえてくる。その場にいた一同皆、振り返る。そこにいたのは…黒髪ロングの少女…。風でなびく長い髪、ツリ目に八重歯。右手にはⅡ‐wayアサルト。一瞬で分かった…。彼女は………。
「私が来たッ!!」
彼女はニヤリと笑い武器を構える
ーー続くーー
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