短編 色

狂歌

運命の糸はいつもそうとは限らない

 突然だが、俺――雲谷鳴後そらざき なご普通の高校生である。

 みんなから好かれ、いい距離感を保っていた。

 悩み事や相談など、みんなからされることもあるごく普通の男子高校生だ。

 だが少しみんなと違うことが1つ。

 俺はが見える。

 見えるってのは、そのまんまの意味に、俺と相手の間に糸が現れ、見える。

 糸には色があり、その色にあった心が分かる。

 赤は否定。

 青は肯定。

 黒は嘘をついてる。

 黄色は驚き。

 緑は悲しみ。

 と……こんな感じに見える……見えるのだが。


「ねぇねぇ〜鳴後〜聞いてる?」



 俺には1人だけ見えない奴がいる。

 生まれてこの歳になるまで糸が見えないってことはなかった。唯一あったとしたら、婆ちゃんが死ぬ1年前にいきなり見えなくなった事があった。その後息を引き取った時、見えたが、透明な糸が空に昇っていき、プツンと切れた時だった。

 だから今回のとはちょっと違う為、なんでなのか俺も頭を掻きむしるぐらい悩みまくっている。

その一人はこの後輩……咲である。


「ねぇ先輩〜寝たフリは良くないですよー」

「なんだよ……咲」

 寝たフリなぞしていない……まぁ机に突っ伏して横になっているから何も言えねぇ状態である。

 コイツと話すと疲れてくるが……なんか落ち着く。


「なんだよって失礼ですね〜人付き合いしない先輩の為、後輩が毎日通ってあげてるのにー」

「余計なお世話……好きで人付き合いしてないだけ」

「うわぁ……根暗」

「誰がね・く・ら・だ!」

 

 流石の温厚、人畜無害の俺だが、今の発言は聞き捨てならなく、咄嗟に起き上がると、目の前にいた咲の顔面に某ロボットの技、シャイニン⚪︎⚪︎フィン⚪︎⚪︎を喰らわせる。

 思いっきり力を加えると、激痛だったのか、「イタタタ!!」っと聞こえる。


「痛い!痛いっすよ先輩!マジで頭がかち割れるぅぅぅ!!」

「ご、ごべんなさい〜!」


 咲の綺麗な蒼い瞳から一雫の涙が流れ、俺の手に伝わり、力を緩めると、離れる。

 怪我している女子にさらに追加するのは心が痛む。


「反省しろよな……」

「うぅ……本当の事言っただけなのにぃ」


 押し込まれていた顔の横をさすりながら、咲は鳴後の前に空いている席に座る。

 なぜだろう……痛みを与えた後なのに、目の前にいる後輩はヘラヘラとしていた。

 ドMなのだろうか……と、後輩の将来を心配してしまった。


「先輩は攻撃的っすねぇー」

「お前が喧嘩売ってきたんだろうが……それにしても」


 ジロッと後輩の身体をジロジロと見つめていると、その視線に気がついたのか、目の前にいた咲が首を傾げる。


「どうしたんですか?」

「いや……お前怪我増えたな」


 元々あった咲の右目の傷――傷と言っていいものか……眼帯を含めず、肌が見えている所に目新しい傷がたくさん出ていた。


「そうですかねぇ……もう全然気にしなくなっちゃっいました」

「あんま……無理すんな」


 スッと自分の片腕を咲の頭を優しく撫で回した。

 あまり咲の表情を見ないようにしている為どんな表情かわからんが……ちょっと微笑んでいると俺の中で思う。

 しばらく話していると、学校の完全下校をしないといけない鐘の音が聞こえ、二人して、学校を出る。


「じゃ〜先輩〜また明日!」

「はいはい……また明日」


 元気よく俺に手を振る咲を見つめ、手を振り返し、別れを告げ、自分の帰り道の方に向く。


「あ、先輩!」

「?……どうした?」


 いざ歩き出そうとすると、後ろから咲の声が聞こえ、振り返る。


「明日早くに学校きてください!伝えたい事があるので!」

「え、伝えたい事って……ってもういないし」


 詳しく聞こうとし、咲の方をもう一度むくがもういなくなっていた。

 まぁ明日聞こうと、思い、自分の家に向かって歩き出す。

 帰り道、少し考えると、振り返った時……咲の体から透明な糸が見えたよう気がした。

 まぁ気のせいか……と思い、その考えを振り払う。

 次の日、咲は亡くなっていた。

 






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