第35話 序盤の侵攻

正暦1011年10月24日 ナロウズ海外州北西部 沖合


 未だに夜の明けぬ空を、2機の戦闘機が飛ぶ。それはラティニア空軍の哨戒部隊であった。何せノルデニアの完全掌握に失敗した上に、ノルデニア軍と同盟を結ぶ連合軍がしっかり兵力を編制して攻めてきているのだ。これに対して空から対処する必要性があった。


「しかし、敵は随分とかなりの兵力を差し向けてくる様だ。情報部の調べではプレシーに対する奇襲も試みているらしい。気は抜けないな」


 〈オラージェ〉迎撃戦闘機のコックピット内で、パイロットの一人は呟く。現在ナロウズ海外州の北部沿岸部には、2機編制の迎撃機を複数配置する形で警戒を成しており、そこに輸送機改造の早期警戒機と地上の対空監視レーダーが加わる。元々ブリティシアの爆撃機部隊を効率的に迎え撃つために築き上げられたそれは、ノルデニアと戦争を始めた今もなお有効的に働いていた。


「承知しております、隊長。ですが、ナロウズ海外州の中心たるプレシーには、我が共和国軍精鋭の白獅子騎士団と第25航空師団が配置されております。如何なるノルデニアでも、新たに築かれた防衛線を破く事は不可能でしょう」


「ああ。本国からは新たな増援が送られてきている。戦線を押し上げる事が出来れば、俺達にも休暇が―」


 と、パイロットが気楽に呟いたその時。レーダー警戒装置が警告音をかき鳴らす。それを耳にしたパイロットは即座に周囲を見渡すが、直後に僚機が突然爆発。地上へと墜落していった。


「な、何事―」


 彼は状況を把握しようとしたが、それは成せなかった。何故なら直後に極超音速の砲弾が飛来し、機体を射抜いたからだ。


「敵戦闘機2機、撃墜を確認。間もなく地上では第7歩兵師団が第2砲兵旅団とともに攻勢を開始する。敵を1機でも多く引き寄せろ」


・・・


ブリティシア連合王国南部 港湾都市ポート・マルス


「しかし、随分と集められたものだ」


「何せ、2個師団を上陸させるのですからね。そこに空挺部隊も加えれば、その数はさらに増えますよ」

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鋼鉄の円卓~ノルデニア王国戦争~ 広瀬妟子 @hm80

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