第24話 壊走
正暦1011年9月15日 ラティニア共和国首都ロマノポリス
その知らせは、ベルダン達ラティニア上層部を震撼させた。それは味方の思わぬ被害についてであった。
共和国元老院議事堂の近く、最高評議会議事堂内の会議室で、ベルダンは唖然とした表情を浮かべる。
「第39戦闘攻撃飛行連隊と、第51戦闘攻撃飛行連隊が、壊滅した…!?」
「はっ…直後に敵軍は大規模攻勢を実施。ノルデニアに展開していた軍は崩壊し、壊走を余儀なくされました。現在、残存する部隊は国境線付近にまで後退し、再度攻勢の準備を整えております」
第39戦闘攻撃飛行連隊と、フレベルグに駐留していた部隊の壊滅は、単なる損害ではなかった。これを合図にノルデニア・ポルニア・スラビア連合軍は大規模攻勢を実施。カーペン諸島の『グングニル』による対地射撃とスラビア軍戦略爆撃機による空爆が北部戦線全域に襲い掛かり、最前線を構築していた部隊は壊滅した。
しかも直後、予備部隊として温存されていた部隊が二の矢として放たれ、フレベルグを通る形で北部戦線を成していたラティニア軍の後方へ突撃。半包囲を敷いた上で挟撃を仕掛けたのだ。ラティニア軍は東部戦線の方へ逃げ込む以外の手段を失い、
第39戦闘攻撃飛行連隊はもとより、第51戦闘攻撃飛行連隊の壊滅は余りにも大きすぎる損害だった。何せパイロットの多くが貴族・騎士階級の子息である。彼らの肉親や身内は精神的打撃を被り、すでに10名以上が自殺を図っていた。
「また、ノルデニア海軍の水上艦部隊が北東部の港湾都市ベルタへ艦砲射撃を実施。迎撃に赴いた部隊は防空を担っていたブリティシア海軍空母艦載機の反撃を受け、相当数の損害を出したとの事です」
「何故だ…何故我らは負ける!?」
ベルダンはそう呟きながら、机の上を叩いた。その問いに対して答えられる者は、その場にはいなかった。すると将校の一人が挙手する。
「閣下、ここは『独立親衛砲兵師団』による報復攻撃を実施しましょう。現在ノルデニアが調子に乗っているのはスラビアとブリティシアの支援があるからであり、さらに我が軍は広域防空システムを完成させております。万が一ブリティシアが同様の手段で反撃を目論んだとしても、間違いなく奴らに正義の鉄槌を食らわせる事が出来ましょう」
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