第22話 フレベルグ解放戦②
正暦1011年9月12日 フレベルグ沖合
「空も中々に壮観な規模で出てきたな」
第3艦隊を率いる重巡洋艦「クリームヒルト」の艦橋で、ラインハルトはそう呟く。開戦後からちょくちょく戦功を積み上げてきているミサイル駆逐艦「ラーズグリーズ」を先頭に立てて進む艦隊は、ブリティシア海軍より援軍として馳せ参じた空母「プリンス・オブ・ヨーク」の艦載機と海軍航空隊の対潜哨戒機に守られながら、堂々と進軍を行っていた。
地上でも陸軍第3歩兵師団と第4騎兵師団が南下を続け、上空には第1竜騎兵旅団の将兵を載せた輸送機が展開。制空権を完全掌握した後に都市部へ殴り込みを仕掛ける算段だった。もしこの街を奪還する事が出来れば、ノルデニア半島内のラティニア軍は総崩れを起こすだろう。そういう目論見もあって、艦隊は制海権保持に忙しい第1艦隊と再建中の第2艦隊に替わって、制海権奪取の大任を背負ってきているのだ。
「敵艦隊、電子機器はフェンリル隊の『グレイプニル』で麻痺を起こしている状態です。先ずはミサイル攻撃で堅実に敵を減らしてから、砲撃戦へと持ち込みましょう」
「そうだな。艦隊全艦、単縦陣を取れ!対艦ミサイルの一斉射による飽和攻撃で打撃を与え、接近。かつて第2艦隊に苦汁を飲ませた敵に報復の一撃を食らわせてやれ!」
艦隊は増速し、自身のレーダーで捕捉出来る距離にまで迫っていく。これには復旧が完了した敵艦が対処に動き出していたが、空には制空権を我が物としたフェンリルがおり、ミサイルを積んだ艦は悉く〈アドラー〉の爆撃を浴びていた。
「撃ち方始め!」
命令一過、SR90艦対艦ミサイルが一斉発射。白い軌跡の数々が敵艦隊へと降りかかる。無論相手も迎撃を試みたが、光学照準射撃以外の手段を潰されたラティニア艦隊に有効な対抗手段は殆どなかった。
「命中、命中!」
「敵艦隊の被害、甚大です!」
「よし…砲撃開始!相手の火砲は貧弱だ、砲撃で圧し潰せ!」
「撃ち方、はじめ!」
2隻の重巡の主砲が、吼える。同格の戦艦をも容易く海底へ蹴落とせる一撃は、敵を一撃で海底へ叩き落とすには十分過ぎた。航空攻撃によってミサイル発射機を損傷させられていた巡洋艦に重量300キログラムの徹甲弾が直撃し、貧弱な装甲が破かれる。後続の巡洋艦と駆逐艦もこれに続き、何十何百もの砲弾とミサイルが降り注ぐ。
・・・
「これで、趨勢は決した。後は…」
『警告!敵機出現、この反応は…』
ルフトアオゲからの通信に、マリアは察する。彼女は魔眼で南に目を向け、数機の〈ヒポグリフ〉が高速で迫るのを確認していた。
「…黄色、か。よし、迎え撃とう」
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