XVIII. 世界に響く鎮魂歌
王都の入口で、私たちはユウヤの棺とともに佇んでいた。
誰も何の音も立てない。
サニタ王とクレア姫のふたりが徒歩でやって来る。
私たちの前に立ち、サニタ王は王冠を脱ぎ、クレア姫もティアラを取った。
クレア姫の目は真っ赤だ。
そのままユウヤと私たちにひざまづくふたり。
ユウヤの冥福を祈る。
あちらこちらから小さな嗚咽や鼻をすする音が聞こえた。
クレア姫も肩を震わせている。
立ち上がったふたり。
サニタ王は魔法の力を使って、王都とすべての都市に声を上げた。
「邪竜は討伐された! ここにいる『虹色旅団』の手によって!」
サニタ王は、ユウヤの棺に目をやった。
「しかし……同時にその英雄も失った。我らの手によってだ……」
改めて王都の住民たちへ顔を向けるサニタ王。
「我らは永遠に語り継がねばならない! この世界を救った異世界の若者を! そして、この虹色旅団を!」
そして、続けて叫んだ。
「我らは永遠に語り継がねばならない! この世界を窮地に追い込んだ我らヒューマンの欲望と愚かさを! そして、それを救ってくれた虹色旅団の種族たちを!」
街中から同意の声と拍手が聞こえる。
城お抱えの楽団が整列した。
「英雄ユウヤの魂がやすらぎを得られるよう、我らの気持ちを歌で示したい。鎮魂歌、斉唱」
静かで荘厳なメロディが流れ、鎮魂歌が王都を、いや大陸中を包んだ。
皆、ユウヤに助けられた経験があるのだ。その感謝と冥福の気持ちを込めて、大陸中の人たちが、海の向こうの国の人たちも歌った。歌を知らないものは祈った。
「…………――――! ――――――――! ――――!」
私はその場に泣き崩れた。
泣き叫ぶ声が鎮魂歌に打ち消されていく。
そんな私に手を携え、抱き締めてくれたのはクレア姫だった。
もうユウヤに会えない。
もうユウヤに好きだと言ってもらえない。
もうユウヤとは永遠にお別れなのだ。
私はただクレア姫にしがみつきながら泣き叫んでいた。
泣き崩れる魔族の女を抱き締める姫の姿は、種族間融和の象徴として、この先長きに渡り語り継がれることになっていく。
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