XVII. 欲に溺れる者

 リリィはすぐに魔法の伝書鳩をサニタ王に飛ばした。

 騎士団長のゴルダインは即時拘束され、彼の部屋からは多くの証拠が見つかる。


 なんと今回の邪竜騒動もゴルダインが原因だった。

 彼は邪竜の封印を解き、自らが率いる騎士団が討伐すれば英雄になれると考えた。つまりは世界の滅亡をはかりにかけたマッチポンプだったのだ。

 しかし、邪竜の強さに犠牲を出しながら敗走することとなり、その結果に焦ったサニタ王は異世界からユウヤを召喚した。

 ユウヤや私たちを見て、ゴルダインは万が一にも討伐できないと考えていたが、討伐されてしまった。

 騎士団のメンツとプライドが丸潰れになると考えたゴルダインは、浅慮にもユウヤの殺害を計画、実行に移したのだ。

 ゴルダインは欲に溺れ、完全に自分を見失っていた。


 クレア姫からの魔法の伝書鳩で詳細を聞き、私たちはユウヤの殺されたあまりにも利己的な理由に激怒した。

 しかし、ユウヤが言っていたこんな言葉を思い出した。


ゆるすことが大切なんだ。怒りや恨みは遺恨を残し、また新たな戦いや差別を生むことになる。怒りや恨みは正しい感情だ。でも、それに呑み込まれてはいけない』


 私たちは男の子の釈放を求め、男の子の母親を治療した。

 男の子とは、どんな理由があろうと今後絶対に他人を傷つけないという約束をした。

 また村人たちにも、男の子と母親を決して責めたり、差別をしたりしないように、逆にサポートをするように強くお願いしておいた。


 ゴルダインは、実家が取り潰しとなった上、城の地下牢で死ぬまで幽閉されることになった。死罪で終わりにするのではなく、生かして反省させて苦しめるのだと、クレア姫が決めたらしい。



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