XIII. 最後の出陣

 旅に出て数年、旅先で人々を助けて回っていた私たちの存在は世界中で噂になっており、もう私たちを笑う者は誰もいなかった。魔族である私と笑顔で握手を交わしてくれるひともいた。


 『虹色旅団』


 人々は私たちをそう呼び、私たちもそれに乗るかたちで『虹色旅団』と名乗り始めていた。

 異種族のはぐれ者たちの寄せ集めである『虹頭にじあたま』が、今や世界を救うかもしれない存在になっている。そして、私たちの今後の行動と結果次第では、種族差別が無くなるきっかけになるかもしれないのだ。否が応でも私たちに気合が入る。


 邪竜との戦いを前に私たちは登城。騎士団長などが見守る中、サニタ王とクレア姫に邪竜との戦いへ赴く旨を報告した。

 この場でサニタ王からユウヤに、討伐の暁にはクレア姫をめとってほしいとの申し出があった。


 分かっていたことだ。英雄はお姫様とハッピーエンドを迎える。それがどんな物語であっても当たり前のエンディングだ。

 正直言えば、悔しい。悔しいよ。とっても。でも、お似合いのふたりだもの。クレア姫が素敵な女性であることも知っている。だから、胸が痛いけど、笑顔で祝福してあげよう。


 でも、クレア姫はどこか寂しげな笑顔を浮かべていた。


「王様、私には心に決めたひとがいます」


 ユウヤの言葉に驚く私。

 えっ、クレア姫以外にそんなひとがいたの? リリィかな?

 クレア姫は分かっていたのか、微動だにしない。


 そして、ユウヤは私の手を取った。


「はえっ?」


 突然の出来事に変な声が出てパニックになる私。クレア姫に目を向けると、いつもの優しい笑顔で頷いてくださった。

 私はパニックのまま卒倒。気を失った。

 翌朝、顔を真っ赤にして照れているユウヤとともに、サニタ王やクレア姫、仲間たちに大笑いされるのだった。


 あれだけ恋い焦がれたユウヤと想い合っていたなんて、あまりにも現実味が無さすぎて、とりあえずは邪竜討伐に集中することにした。現実逃避だね……


 さぁ、準備は整った。

 いよいよ虹色旅団、最後の出陣だ!

 邪竜よ、首を洗って待っていろ!



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