X. とんでもないイタズラもの

 たすけて〜!


 このクソ猫、しつこい! 何で毎日追っかけてくるのよ!

 路地裏を走り回って逃げる私。


 私は、桃色の髪・フェアリーのピッチュ。

 フェアリーなら飛べばいいだろって?

 羽根が無いのよ! ヒューマンにむしられたの! 高く売れるとか言って! 死ぬほど痛かったわよ!

 食べるものに困らないから街に居着いているけど、困ってるのがこのネコ! ヒューマンから見ればカワイイかもしんないけど、私から見ればドラゴンと同じ! 私の何倍もある大きさのが、毎日私を追い掛けてくんのよ!


 にゃー


 げっ! つかまった!


 にゃにゃーん♪


 きゃー、私を転がさないでぇー!

 くわえちゃダメェー!

 ザリザリの舌がいたいぃー!


 にゃーん


「にゃー太、お人形さんで遊んでんの?」


 こんな可愛い人形なんて無いわ、ボケッ!

 飼い主!? 文句のひとつでも言ってやらないと気が済まないわ!

 にゃー太とやらのヨダレでデロデロになったまま、強烈にクレームを入れてやった。賠償金払うまでついていくからね!


 ユウヤとは、こんな最低な出会いだった。


 旅の間、私の定位置は、ユウヤの頭の上。

 ちっこくて器用な私は、鍵を開けたり、罠を解除したりと大活躍! ただ、誰かの手に乗ったりしなきゃいけないので、手の届く範囲だけね。はぁ〜、空を飛べたらなぁ……


「ピッチュ! 大ニュース!」


 宿屋で果物の籠を改造したベッドで寝ていると、ユウヤが大はしゃぎでやってきた。つまんないニュースだったら鼻毛抜いてやる。


「羽根が復活できるかも!」


 大ニュースじゃなくて、超大ニュースじゃない!

 この街の冒険者ギルドに「伝説の大盗賊・ヨエモンの屋敷探索」というクエストが出されているらしく、そこに「光の羽根」なるレアアイテムが眠っているらしい。全部「らしい」かよ。まぁ、でもよくやった。褒めてやろう。


 ユウヤとふたりで挑む初めてのクエスト!

 屋敷は竹藪の中にひっそりとあった。屋敷というよりも家だ。探索はあっという間に終わるのでは……なんてことはなく、家中ありとあらゆる罠が張り巡らされていた。なるほど、クエストになるわけだ。

 罠を解除しながら進む私たち。半日かかってすべての部屋を確認したが、特に何もなかった。残念。


「なんかおかしくない?」


 ユウヤの一言で、私も気がついた。

 一区画、壁に囲まれて入れない場所があるのだ。

 ユウヤ、やっておしまい。

 私の命令でユウヤが壁を力付くで蹴破った。

 おぁっ! お爺ちゃんがいた……


「裏口があるんじゃが……まぁ、いい。頑張ってここまで来たお嬢ちゃんにご褒美じゃ」


 お爺ちゃんの手には、光り輝く羽根が!

 その羽根はすぅっと浮かび上がり、私の背中へくっついた。

 そして、そのまま光は収まり、私の背中には羽根が復活したのだ!


 ぱたたたたた……


 ちゃんと飛べる。飛べたよ、ユウヤ!

 ユウヤの顔の周りを飛び回る私。


「その羽根はお嬢ちゃんを待っていたのかもしれないね。そんなお嬢ちゃんには『とんでもないイタズラものThe Super Prankster』の称号を与えよう」


 そう言うと、お爺ちゃんの姿は霧のように消えていった。


 ちゅっ


 呆然としていたユウヤのくちびるを奪ってやった。にしし。


 何? ファーストキス!? えっ、ギィゼとまだしてなかったの!? その方が驚きだわ! ぐずぐずしてんじゃないわよ、この意気地なし!



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