V. もうひとつの色「銀」
旅は、クレア姫が全面的に支援してくれた。
旅の出発にあたっての金銭的支援だけでなく、他の国へ赴く際への紹介状なども書いてくれたのだ。大陸を統べる王国の姫が書いた紹介状は、どこに行くにも絶大な力を発揮した。
さらに、色々な種族が入り混じった私たちを城に招き入れてくれた。しかし、怪訝な顔をする騎士団長や文官、メイドたちに、私たちは肩身が狭かった。
「無礼者! 世界を救うために過酷な旅をする彼らにその態度は何事ですか!」
クレア姫は彼らを一喝。ペコペコしながら去っていく彼らの姿に私たちの溜飲が下がる。そして、私たちに向けてくれるプリンセススマイルは、老若男女関係なく心から魅了された。
一方で、クレア姫は城の中で孤立無援の中、私たちを守るために戦ってくれていたのだ。一緒に旅には出られないが、自分を八人目の仲間にしてほしいという言葉に、私たちは笑顔で大歓迎した。
私たちは、旅の中で少しずつ明らかになっていった邪竜の正体をクレア姫に報告した。それははるか昔に封印された邪神の化身であり、その封印が解かれたことが分かったのだ。
勝ち目のない相手。絶望に打ちひしがれるクレア姫に、私たちは立ち上がり、はっきりと言った。
「これから邪竜討伐の旅に出ます」
驚くクレア姫。邪神の化身を相手に戦うと言うのかと。
私たちひとりひとりと目を合わせ、その覚悟を汲み取ったクレア姫は、力強い表情で頷いた。
こうして、私たちの邪竜討伐の旅は始まったのだ。
その日の夜は、お城に泊まらせてもらった。
そこで、私は見てしまった。
バルコニーでユウヤに身体を寄せるクレア姫を。
透き通るような白い肌、まるで宝石のような銀髪の神聖なるお姫様。
クレア姫とは真逆に、たくさんの男たちの慰みものにされて汚れきっている魔族の私。それこそ勝ち目なんかない。お似合いのふたりだ。
でも、胸が痛い。張り裂けそうだ。
決して成就することのない私の恋。その事実に、私はただ涙した。
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