III. 異世界からの召喚

 救い出された私は、自らの種族を隠しながら、ユウヤと共に旅をすることになった。魔族とともにいることはリスクであるはずなのだが、こんな私を普通の女性として見てくれているようだ。私に気を使い、とても優しくしてくれるユウヤ。彼には差別的な意識がないらしい。


 ある夜、宿屋の部屋に空きが無く、ひとつのベッドで同衾することになった。こんな状況でも、ユウヤは私に指一本触れてこなかった。

 そして、ユウヤは自分のことを話してくれた。


 本当の名前は「棚橋たなはし優弥ゆうや」。

 彼は別の世界のヒューマンで、突然この国の王であるサニタ王に召喚されたらしい。サニタ王は、この大陸の実質的な支配者だ。そこで邪竜討伐を言い渡されたが、戦いの経験もなく、何の力もない彼にサニタ王は落胆。ユウヤを城から追放しようとしたが、娘であるクレア姫がそれに激怒。クレア姫は旅の支援をすることを約束し、討伐する方法を探してほしいと懇願され、それを了承したとのことだった。

 そんな旅の途中、街中まちなかでムチに打たれていた私を見掛け、助け出すことにしたらしい。


「ギィゼを守るために強くなる。だから、一緒に来ないか?」


 ユウヤは自分と別れることで、私がまた奴隷に身を落とすことを案じている。また男どもの慰みものになるのではないかと。

 こんな汚れた私の身を案じてくれる男性がいたことに胸が熱くなる。

 私はベッドを下りてユウヤにひざまずき、彼に忠誠を誓い、旅の完遂を誓ったのだ。



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