II. 魔族の女

 私は魔族の女・ギィゼ。

 紫色の髪と肌。黒い目玉に金色の瞳。頭には二本の角も生えている。

 かつてはヒューマンたちと敵対し、大陸の半分以上を支配していた。

 そんな隆盛を誇った魔族も今や希少種族ではあるが、ヒューマンに隷属し、卑下される存在として認識されていた。


「大丈夫? 立てる?」


 新月の夜、あたりを暗闇が包み込んだ頃、広い屋敷の敷地内にある粗末な奴隷小屋に忍び込んできたひとりの若い男。悪徳商人の奴隷として酷使されていた私を救ってくれたのは、漆黒の髪と瞳のヒューマンだ。

 ヒューマンは、赤茶色や茶色の髪、濃い茶色の瞳が多く、黒髪と黒い瞳はとても珍しい。吸い込まれそうになるその深くて優しい瞳を、私はただずっと見ていた。


 それがユウヤとの出会いだった。



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