第7話 エッチなお姉さんとAI音声認識サービス「コロクサ」完全起動
こんにちは。なんやかんやと異世界転移した
いやいや、本当にこんなことがあるんですねぇ。BARで気持ちよく飲んでいたらエッチなお姉さんに逆ナンされ、気付けば異世界に──なんて昨日の俺に話したところで、信じて貰えないでしょうねぇ。
え? エッチなお姉さんと組んずほぐれつして羨ましい? いやいやそんなことはありません。だって俺の目の前には今──
「なんでオーガの死体を持ってきてるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
そう、俺の目の前には
「うわうわっ! 今手に持ってるオーガどうなってるの!? それどうなってるの!? かろうじて緑色の肌だからオーガだと分かるけども! なんか飛び出てるし! お姉さんもお姉さんでエグいよ! なんで血塗れで笑ってるの!? エッチな格好のせいでなんか最高にサイコな感じだけれども! ああ! やめて! オーガだった物体のお腹に手を突っ込まないで!!」
俺の目の前で行われる、凄惨な行為。猟奇的なエッチなお姉さんがオーガの腹に手を突っ込み──
「あったあった! ほらあったよ!!」
と、俺の顔の前に手を突き出す。相変わらずエッチなお姉さんは満面の笑みで──
俺はあまりにも常軌を逸したエッチなお姉さんの行為に恐怖し、目を閉じながら「俺はノーマルなんですぅぅぅぅぅぅ。痛いの怖いのは嫌なんですぅぅぅぅぅぅぅ」と、半ベソを書きながら頭を振る。
「ノーマル? 何言ってるの? ほらこれだよこれ! 魔石! 魔石はギルドで買い取ってくれるし、討伐対象モンスターなら高く買い取ってくれることもあるんだよ!」
「んぇ? 魔石?」
「そう魔石! 魔石を取り除いておかないとアンデッド化することがあるからね!」
そう言われて恐る恐る目を開くと──エッチなお姉さんの手には、赤黒く光るこぶし大の石が握られていた。
「すごい! これがラノベとかでよく見る魔石! 以外と鈍い光だけど綺麗だね! ──ってなるか!! お姉さんは血塗れだしオーガはなんかもうぐっちゃぐちゃだし! 善良な一般人の俺には刺激が強いよ!! HEY! コロクサ! バックルームのシャワールームにお姉さんを連行して綺麗にして差し上げろ!」
『了解しました』
コロクサの返事とともに、エッチなお姉さんが目に見えない触手のようなものに絡みつかれ、シャワルームへと引き摺られていく。成人式で泊まり込みになることや、練習で終電を逃すこともあったので、作っておいたのだ。
例によってエッチなお姉さんはギッチギチに拘束され、「な、なんで縛るのよ! 私をどうするつもり!?」と言いながら、なんだかまんざらでもなさそうである。
「ふぅ……まさか転移初日にこんな洗礼を受けるなんて……」
『それよりオーガはどうしましょうか? よければ私が魔石を抜き取り、遺体は廃棄物として処理しておきますが』
「え? お前そんなことも出来るの?」
『はい。とりあえず業務で発生した廃棄物ではないので、一般廃棄物として処理しておきますね』
「ゆ、優秀だなぁ。だけどどこに廃棄するんだ?」
『回収したあとで分解し、きちんと土に返します。バックルームにあるダストボックスも一般廃棄物と産業廃棄物に分かれていますので、マスターもしっかり分別して下さいね?』
コロクサがそう言うと、外に放置されたオーガたちが一箇所に集められ、黒い球体に包まれて消えた。
『とりあえず回収した魔石はバックルームの金庫に保管しました。ひとまずはこちら──アースクールでマスターが困らないようには対応していきますので、また何かありましたら呼んで下さい』
「ゆ、優秀すぎるだろ。正直あのエッチなお姉さんより優秀なんじゃないのか?」
『女神様はとても優秀ですよ。マスターに力を譲渡したせいで糞の役にも立たない存在に成り下がっていますが、元は優秀です。まあちょっと頭が
「頭が
『セット面の鏡に女神様のステータスを表示しましたが、抜けていた項目がありまして。私もまだ完全起動していませんでしたからね。データ反映も終わったのでもう一度表示します』
「おお! ようやくデータ反映されたのか! どれどれ……」
名 前/エッチーナ・オ・ネイサン
種 族/女神
属 性/火(エンチャントLV.1)
体 力/10→1000
魔 力/10→1000
攻撃力/10→1000
防御力/10→1000
素早さ/10→1000
魅 力/9万→9億
知 力/50
スキル/ワインレッドの心
・全攻撃に火属性付与
・火属性による攻撃無効
術 技/女神の奇跡
・女神の力で色々出来る
「え? 突っ込みたいところはたくさんあるけれど……これって全部本当なんだよなコロクサ?」
『はいそうです』
「つまりエッチなお姉さんの名前って……」
『エッチーナ・オ・ネイサンです──』
と、コロクサが機械的な声で言い放ち、俺は生まれて初めて、笑いすぎて死ぬかと思ってしまった。
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