第2話 エッチなお姉さんとフランケンシュタイナー


「いてて……うぅ……なんだよ……どうなってるんだよこれは……」


 coloréコロレの外は大草原。自分の上にはエッチなお姉さん。相変わらずエッチなお姉さんはいい匂いを漂わせている。


「『どうなってるんだ』はこっちのセリフ! これはどういうことなの!?」

「いやいや! それはこっちが聞きたいよ!」

「言ったよね!? 『どうなりたいか思い描いてみて』って! あなたは世界一の戦士なんだよね!? なんでサポートスキルしか発動してないの!? それにこの建物!! なんで建物も一緒に転送されてるの!? もう訳分かんない!!」


 なんだか昨日の夢でのエッチなお姉さんと口調が違う気がするが、気のせいだろうか。


「なんのことを言ってるんだ? ごめんなさいだけど全然意味が分からないよ」

「昨日Valhallaヴァルハラに君をスカウトに行ったでしょ!? 覚えてないの!?」

「え? Valhallaヴァルハラにスカウトに来た? 確かに(BARの)Valhallaヴァルハラで君と会った記憶はあるけど……スカウトってなんのことだ?」

「もう! Valhallaヴァルハラは優秀な戦士が集まる場所でしょ? 強い戦士が必要だったからスカウトに行ったんだって!」

「戦士? え? BARに戦士? 何言ってるんだ? え? もしかして北欧神話のValhallaヴァルハラと掛けたダジャレ的な?」

「え? 逆にさっきから何言ってるの? あなたValhallaヴァルハラの戦士じゃないの?」

「俺は客だよ。昨日は飲みに行ってただけ。あのBARは行きつけだからさ」

「ん? BAR? BARってあのお酒を飲むところの? 分類で言うなら飲食店的な?」

「え? それ以外に何があるって言うんだ?」

「………………」


 そうしてしばらくの沈黙が流れる。エッチなお姉さんが自分の上で「どういうこと……?」と、首を傾げているが、「どういうこと?」はこっちのセリフだ。


 それからどれぐらい時間が経っただろうか──


 エッチなお姉さんが俺の上から降り、待ち合いのふかふかソファに座って「とりあえず現状の確認をしましょうか? 何か大きな手違いがあった気がするわ」と、足を組んできりりとした顔で言い放つ。


 エッチな格好で足を組んでいるせいで、とてもセクシーだ。いや、それより口調がまた変わったので、「さっきと口調違くない?」と突っ込んでおく。


「う、うるさい! 一応女神なんだからちゃんと話した方がいいじゃん!」

「え? もう手遅れだよ? 君は俺の中でエッチな格好した話し方がフランクなお姉さんで確定したから」

「くぅ……もう手遅れだったか……せっかく女神様らしく頑張ってたのに……」

「大丈夫だよ。そのエッチな格好はかなり女神様っぽい」

「さ、さっきから何よ! その『エッチな格好』って!」

「え? 気付いてないの? 正直君の格好はとてもエッチだよ。なんて言うか……『エロい』を煮詰めたような格好だね。今も足を組んだせいで見えちゃいけないものが見えている。君の格好から黒だと勝手に思っていたが……白だったことはポイントが高い」

「え? 見えちゃいけないってパンツのこと? なんで? アソコを隠すために履いてるんだから見えていいんじゃないの? アソコが見えてるわけじゃないでしょ? え? もしかしてアソコ見えてる?」


 と、エッチなお姉さんが足を開いて「アソコ」と連呼する。


「女の子が足を開いてアソコアソコ言うんじゃありません!!」

「え? なんで? なんで怒ってるの? アソコって言っちゃダメなの? え? じゃあ固有名詞で言ったほうがいい?」

「もっとダメだ!!」

「怒んないでよ! 意味分かんない! もうヤダ!!」


 と、唐突にエッチなお姉さんが立ち上がる。そうして何故だか分からないが、俺に向かってフランケンシュタイナーをかました。


 そう、あのフランケンシュタイナーだ。


 太ももと太ももで顔を挟むプロレス技のフランケンシュタイナー。むちむちの太ももと純白のパンツが眼前に。


 正直とても苦しいのだが、気持ちよくもある。だってそうだろ? エッチなお姉さんの太ももで圧迫されながら、目の前には純白のパンツだぜ? 苦しいよりも気持ちいいって思う方が正常ってもんだと思うと同時、俺の口からは「気持ちいい」と漏れ出てしまっていた。


 これは大変な発言をしてしまったと後悔するが、エッチなお姉さんのいい匂いが香り、「いい匂いだ」と漏らしてしまう。


 これは完全に終わった。俺の鼻は今まさに、エッチなお姉さんの大事な部分に押し付けられている。


 とりあえず弁明しようと「違うんだ。気持ちよくていい匂いがしたからつい」と、ダメ押しの変態発言をかましてしまう。


 するとやはり俺の変態性に怯えてしまったのか、エッチなお姉さんがフランケンシュタイナーを解き、床に崩れ落ちて泣き出してしまった。「無理だよ……こんなの無理だよ……」と泣いているので、相当怖かったのだろう。


「ご、ごめん。そんな怖がらせるつもりじゃなか──」

「こんなの無理だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! あなたを殺せば力が戻るかと思ったけど! あなたに力を譲渡したから殺す力が残ってないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


 エッチなお姉さんが泣きながらとんでもなく物騒な言葉を言い放つ。


「え? 殺そうとしたの?」

「うん。契約者が死ねば力が戻るから……」

「え? 本気で言ってる?」

「だって! あなたが悪いんじゃん! 自分のこと世界一の戦士だって嘘ついたからじゃん!」

「え? そんなこと言ってないよ?」

「言ってたよ! 『俺は世界一だ! 切るのも得意だけど! 染めることに関しては誰にも負けない!(訳:俺は自称世界一の美容師だ! はさみで切るのも得意だけど! 髪の毛を染めることに関しては誰にも負けない!)』って! 斬撃も精神干渉も得意だって!!」

「………………」


 そうしてしばらくの沈黙が流れる。


「よし……とりあえず冷静になって話し合おうか?」

「うん……」


 それから俺とエッチなお姉さんは、現状を把握するために話し合った。お互いに恐ろしい程の勘違いをしていたので、話し合いはこじれにこじれた。何度かブチ切れたエッチなお姉さんのフランケンシュタイナーを食らったが、力が弱っているらしいエッチなお姉さんのフランケンシュタイナーは、ご褒美でしかない。


 だがやられてばかりでもあれなので、俺もエッチなお姉さんに恥ずかし固めやパイルドライバーで応戦し、とてもいいものを見させてもらった。


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