37話 試合の後悔

 球場の外で軽いミーティングをしている。

「今日の試合をモノにできなかったのは全て俺の責任だ。こんな結末で3年生が最後の試合になってしまうとは思わなかった。3年生でベンチから外れた人たち。勝ててやれなくて本当に申し訳ない。試合は相手にツキがあったし、球場の雰囲気も途中からかなり相手寄りだった。それでも最後まで諦めずに戦い抜いてくれてありがとう。諦めなかった姿勢は応援してくれた人たちに伝わったはずだ。3年生は今日で引退になる。キャプテンの方から何か話すことはあるか?」

 監督の話が一旦終わり、桜田先輩が前へ立つ。先輩の目は赤く腫れていた。

「今日まで俺についてきてくれてありがとう。試合は残念な結果になってしまったけど、このチームで戦えてよかった。同期のみんな。喧嘩を沢山したし、意見がぶつかり合うことが多かったよな。それでもより良い練習を行うために話し合うことをやめなかった。喧嘩の分だけ仲良くなれたと思ってるし、切磋琢磨してポジション争いをしたことは一生忘れることはないだろう。1年生、2年生たち。俺たちが2年春のセンバツに出て以来甲子園に行けていない。みんなにも甲子園の空気を知ってほしかったし、一緒に行きたいと思っていた。それでも叶わなかった。みんながこのまま努力をすれば絶対に甲子園へいけると思っている。次の春はセンバツに出てくれ!俺たちも出来る限り行ける人たちで応援に行くから。白田、吉岡、天童。この次の世代、また新しく入ってくる新入生たちを引っ張っていってくれ!」

 キャプテンの言葉でほとんどの人は涙ぐんでいる。そんな中で俺と龍樹は浮かない表情をしていた。

 試合は龍樹のスリーランホームランと俺の盗塁ミスがなければ多分勝てていただろう。それでも先輩たちは俺たちを責めることをしなかった。逆にその優しさが辛かった。

 代走の時、積極的に盗塁を狙わず慎重になっていればとか、逆に最終回は積極的に盗塁を狙わなかったのかと自問自答を繰り返す。多分龍樹も同じだろう。なぜあの時に間を取って吉岡先輩と話し合わなかったのかと。タラレバを言ったらキリがないとはいえ、もっと深く考えていればどうにかなったのかもしれないという思いがあり、すぐには割り切れなかった。

 俺は1回目の代走の時に慢心しているつもりはなかったが、今まで盗塁を失敗したことがないから心の中で油断があったのだろう。それであのざまだ。

 2回目の時は1回目に失敗したことと2アウトということで完全に消極的だった。多分この場面は走らないのが正解なのだろう。それでも足を活かした選手がこの場面で積極性を欠いたらダメだと思った。

 これからも大事な場面で失敗することはあるだろう。それでも今日みたいな後悔をしないために積極的に行くことを決意した。


 いつまでも球場の外にいても周りの邪魔になってしまうということで今日は解散になった。

 後日、ミーティングと正式な引退式が開かれることになった。

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