34話 準決勝 堺出商業高校⑤
7回表の攻撃。
2番バッターの渚先輩は、7球粘るも最後はストレートに押し負けてセンターフライに倒れた。
続く3番の桜田先輩は初球の変化球を見送り、2球目のストレートを左中間を真っ二つに破る2塁打を放つ。
ここで監督が試合の流れを変えるために動く。4番の新川先輩に代わって、代打の切り札である2年生の海堂先輩を打席に送った。海堂先輩の凄いところは集中力が凄まじく1打席勝負だとほとんどヒットを打つところだ。先祖が武士の家系らしく実家で剣道場を営んでいて父親以外には負けたことがないというほど強い。先輩曰く、間合いの取り方や読み合い、集中力を高めることと野球のバッティングが似ていて楽しいし好きだと言っていた。一度投手を攻略してしまうと興味がなくなってしまうとも。監督もその点を考慮して代打のみの起用にしているみたいだ。
そんな海堂先輩は3球目のカーブを完璧に捉えて鋭い打球が三遊間へ転がっていった。打球が速すぎて桜田先輩は3塁でストップ。
1アウト1塁、3塁となり俺の出番がやってきた。もちろん代打ではなく海堂先輩の代走での出場だ。
「速水、1球目か2球目でバッターが追い込まれる前に盗塁を頼むぞ。2塁にいったらワンヒットで帰れそうならホームを狙っていけよ。2点取って差を広げて流れをもう一度引き寄せたい。行ってこい!」
「はい!」
監督の指示をしっかりと聞き1塁ベースへ向かう。
そのタイミングで相手の山本さんがマウンドを降りて2年生の木下さんがブルペンからマウンドへ向かっていた。
うちの監督も積極的な起用だが、相手の元プロ監督もかなり強気だ。どちらもこの回を勝負所と踏んだのだろう。
木下さんのクイックには注意だ。1球目でタイミングを取って2球目で盗塁するという想定を頭の中で
投球練習が終わり5番バッターの立川先輩が打席に入る。
投球練習を見ていてクイックのタイミングを測ろうとしたが、動画で見たよりも少しクイックが遅かった。多分もう一段階速くなると思い気を引き締める。
初球のフォークを見送ってボール。クイックは投球練習の時よりも速くなっていた。
タイミングも大体掴めたし次の球で盗塁を狙うぞ。
2球目のストレート。
スタートを切ったが、先程とは比べ物にならないくらいクイックが速い。しかも高めにウエストしていたようだ。キャッチャーからの送球が完璧に送られてスライディングに入る時にはショートがタッチするのを待ち構えていてアウトになってしまった。
これが俺の野球人生で初めての盗塁失敗になった。
かなりのショックを受けながらベンチに戻ると、監督や皆はあれは仕方ないと言っていた。ただただ謝ることしかできなかった。もっと分析していれば、準備をしていればと後悔をしているうちに攻撃は終わっていた。
ベンチで呆然としていると監督からセンターの守備につくように言われた。反省は試合後にして気持ちを切り替えて守備へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます