33話 準決勝 堺出商業高校④
5回表の攻撃は、山本投手の変化球攻めを前にして3者凡退に倒れてしまった。春季大会や準々決勝までの試合ではストレートを軸に投げていたが、今日に限っては今のところほとんど投げ込んできていない。こちらの作戦を見透かしているのか、ただストレートの調子が悪いだけなのかはまだ分からないだろう。
5回裏の守備。
赤座先輩は珍しく先頭バッターを四球で出すと4番バッターにヒットを打たれてノーアウト1塁、3塁になる。
5番バッターのゲッツー崩れの間に3塁ランナーがホームイン。3点差に詰め寄られる。
その後、6番バッターに四球を与えたものの7番、8番をなんとかフライアウトに打ち取ってこの回の守備は終わった。
赤座先輩の調子が全然上がらず、ここまで制球に苦しむ先輩を見るのは俺が入部してから初めての出来事だった。
5回が終わりグラウンド整備が行われている。
「赤座、前の試合の疲労が残ってるのか?ここまで制球に苦しむのは久しぶりに見るぞ。まだ投げられそうか?」
「身体に疲労を感じてるわけではないと思うんですけど、スライダーの指の掛かりが悪いのか微妙なコントロールが出来ていない感じです。カウントが悪くなって四球を出しちゃったので次の回は早めに追い込んで有利に進めていこうと考えてます」
「わかった。いつも赤座には負担をかけているが、今日の試合は7回まで投げて欲しい。次の回も頼むぞ!」
「わかりました!」
「攻める時間が短くて、相手高校の追い上げムードに拍車を掛けてしまっている。山本くんは良いピッチャーだが変化球は制球に甘さが出ている。次の攻撃は各バッター得意な球を狙っていくぞ!まずはランナーを出そう」
「はい!」
監督も山本投手の4回と5回のピッチングを見て四球には期待できないことを感じたのだろう。打てる球を打つ。シンプルだが好投手攻略には重要なことだ。
6回表の攻撃。
7番の山井先輩が初球のスライダーをしっかり振り抜き三遊間を抜けるヒットになった。
続く吉岡先輩には全球ストレート勝負。4球目を打ち上げてしまいサードがキャッチする。
赤座先輩にもストレート主体のピッチング。3球目のストレートを打つがボテボテのサードゴロ。転がった場所が良くピッチャーとサードがお見合いをして内野安打になった。これで1アウト1塁、2塁。
ここで絶好調の野田先輩が打席に入る。
初球のスライダーを見送り、2球目のカーブを打ちにいくも一塁線へのファールになる。3球目のスライダーを振り抜き人で捉え、打球はセンター方向へ転がっていく。しかしあらかじめセカンドベースよりに守っていたショートの守備に阻まれ、6-6-3のダブルプレーになってしまった。
6回裏の守備。
9番バッターを三振に切って取ったものの、1番、2番に連続ツーベースヒットを浴びて1点返されてしまう。
3番バッターのセカンドゴロでランナーが3塁へ進んだ。
4番バッターへの3球目に投じたスライダーを引っ張られてショートの頭の上を越えそうな打球だったが、これを桜田先輩がジャンピングキャッチをした。追加点を与えないファインプレーだ。
試合は6回を終えて7対5でリードしているものの押され気味の展開が続く。球場全体も逆転劇を見たい、そんな雰囲気になりつつあった。
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