32話 準決勝 堺出商業高校③

 代わった山本さんが渚先輩と桜田先輩を2者連続三振に切って取り、試合のイケイケムードを一気に変えてしまった。


「向こうの監督も野田が2発も打つのは予想外だっただろうし、俺も予想外だった。多分この回ピンチになったら山本君に代えるつもりだったんだろうな。俺ならそうするし。今日の山本君はかなり調子が良さそうだからなかなか点を取れないかもしれない。4点差あるからしっかり守り勝とう。白田!良い球はいってるぞ!ピンチになったら赤座に代えるから全力を出し切って投げてこい!」


「はい!」


 4回裏。

 気合いを入れた白田先輩は先頭バッターの7番を三振で抑える。

 しかし8番、9番に連打を浴びて1アウト1塁、3塁のピンチを招いてしまいここで降板となった。


 そして赤座先輩がマウンドへ上がる。


「ピンチにしちゃってすみません。赤座先輩お願いします」


「任せろ!ベンチから応援頼むぞ!」


 白田がベンチに戻っていくのを見送る。


「吉岡、ブルペンで投げてた感じだが、あんまり球が走ってないと思う。特にスライダーのコントロールが甘くなるかもしれない。それでもなんとしても0点で抑えたいから配球頼む」


「わかりました。外角中心で配球していくので最悪このバッター四球でも良いくらいの気持ちで投げ込んで来て下さい。絶対抑えましょうね!」


 内野はゲッツーシフトを敷いて、外野は定位置にポジションを取っている。


 話した通り外角中心の投球で1番バッターをツーエンドツーで追い込んでからの5球目。

 甘く入った大きく曲がるスライダーを完璧に捉えられる。鋭い当たりだったがセカンドの正面をつくライナーで2アウトになる。


 2番バッターには、ストレートとチェンジアップだけを投げ、スリーエンドワンになる。

 5球目、6球目はストレートをカットされた。

 続く7球目のストレート。真ん中高めに浮いた球を芯で捉えられた。

 打球はライトフェンスギリギリの大飛球になったが、山井がジャンピングキャッチをした。


 ナインはベンチへ戻り、山井をたたえた。


「山井ありがとう!スタンドまで持っていかれたかと思ったわ。まじで助かった」


「いやー、偶々だよ。グローブを見たらボールが入ってたんだ笑 それでもピンチを救えて良かったよ」


「赤座先輩、自分の作ったピンチを抑えてもらってありがとうございます!」


「かなり危なかったけど、0点で戻って来られて良かったわ。声出しありがとな!」


 ピンチを切り抜けて一安心する鷹松ナイン。そんな中監督が指示を出す。


「山本君から連打をするのは難しいと思う。追い込まれるまではストレート勝負でいこう。球威があるから勢いに負けないようにフルスイングしていこう。追い込まれたらできるだけ粘って球数を投げさせるぞ!」


 中盤戦でリードしている展開だが山本さんを攻略するために各自が気を引き締め直した。

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