30話 準決勝 堺出商業高校①

 試合は10時開始予定だが、俺たちがアップしている時から応援席はかなり埋まっていた。

 今日は日差しがとても強く、気温は36℃に達するみたいだ。


「第1試合で良かったよな。第2試合の2時開始予定は暑すぎてしんどいわ」


「春季大会を頑張ってくれた先輩たちのお陰だよな。それでも今も暑いことには変わりないし、気をつけないと熱中症とか足を攣ったりしそうだな」


「龍樹はほぼ確実に登板するんだからストレッチと水分補給はしっかりやろうな」


「強く押しすぎだ! ストレッチはゆっくり長くっていつも言ってるだろ!」


「いつもと同じくらいの力で押してるぞ? 疲労で筋肉が硬くなってるんじゃないか?」

 

 そう言い合いながら俺は龍樹を後ろから押してストレッチを入念にしていた。

 そして試合前の準備を終えた。


 10時になり定刻通り試合が始まった。

 俺たちの先攻。


 相手先発は予想通り2番手の荒川さん。


 先頭バッターの野田先輩は8球粘って四球を選んだ。


 2番の渚先輩は送りバントの構えをする。1球ファールになったが投手の制球が定まらず四球になった。


 そして今大会6割を超える桜田先輩が打席に入る。

 ツーボール、ワンストライクからの4球目。

 甘く入ったストレートを右中間に打球を飛ばし、先制点を取った。

 なおランナー2塁、3塁でチャンスは続く。


 4番の清水先輩が内野フライで倒れるも5番の立川先輩が犠牲フライで追加点を取る。

 6番の星先輩は三振でこの回の攻撃は終了となった。


「初回から良い流れを作れてたよな」


「立ち上がりで荒れてくれると助かるよね。この前の攻めあぐねてる感じがしないのはベンチにいても重たい空気にならなくていいな。監督も今日は笑顔だしねw」


「実力が近い相手から欲しかった先制点を取れたんだから機嫌もよくなるさ。俺たちも流れを渡さないように声出しするぞ!」


 龍樹たちと少し会話をしている間に先輩たちが守備につく。

 

 1回裏の守備。

 白田先輩は先頭バッターに四球を許してしまう。

 盗塁をされて、きっちり送りバントを決められて1アウトランナー3塁のピンチを迎える。

 3番バッターにセンター前ヒットを打たれ、早くも1点返されてしまった。


「球は良さそうだけど、打者が山を張ってるのかな?」


「そうかもしれないな。ベンチからだとコースまではよく見えないけど、いつもより甘い球になってるんじゃないか?」


 龍樹と会話をしていると、続く4番バッターもセンター返し。これは桜田先輩がなんとか追いつき6-4-3のダブルプレーに仕留めた。


 初回からお互いの打撃陣がよく振っていて、荒れた展開になりそうだと直感した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る