29話 準決勝の相手

「ミーティングを始めるぞ」

 昨日も試合だったのに、朝早くから学校へ集まっていた。試合の反省をして寝るのが遅くなったし、疲れが抜けきってなくてしんどい。


「準決勝の相手は堺出商業高校だ。4年前から元プロ野球選手の牧田さんが赴任してから急速に強くなったチームだ。他県から牧田さんの指導を求めて入学した生徒も多数いると聞く。それに年々しっかりとチーム力が上がってきていて、今年は投手3本柱とどの打順からでも攻撃の起点を作れる打撃陣がかなり厄介だぞ。3試合で32得点、3失点だから普通に強い。牧田さんを監督になって初めての甲子園に連れて行こうという意思を感じる」


 県大会もベスト4に残るような高校はレベル差があまりない。昨日みたいに流れを掴み損なうと負ける可能性だってある。それに監督が元プロなら試合の流れを読むのも上手いだろう。

 説明もそこそこに対戦相手の試合の動画を見る。


「うちと同じように先発ピッチャーは1回戦と3回戦はエースが投げていて、2回戦は2番手ピッチャーが投げている。春季大会も交互に投げてきたからおそらく2番手ピッチャーが先発すると思う。3試合とも継投で2年生のピッチャーを使ってきているから次の試合もどこかで使ってくるだろう」


 たしかに3本柱というだけあって、3人ともストレートは140kmを超えているし、相手のバッターが空振っているところを見ると変化球のキレも良いのだろう。エースの山本さんは、ストレートが重そうだし、2年生の木下さんは普通に投げてきたと思えば、クイックや2段モーションでタイミングを外したりしてくる。

 2番手の荒川さんもいいピッチングをしているが、先発できてくれるなら他の2人よりもチャンスを作れそうだと思った。


「野手陣はストレートに振り負けないことを意識していくぞ。2番手ピッチャーは制球力が高いから四球に期待せず、追い込まれたら積極的に振っていくぞ。見逃し三振は無しにしよう。あとは各々が自分のバッティングをするだけだ」


 反省して思ったが、昨日は自分のバッティングを全然できなかった。読み合いも裏をかかれたし、狙いも少しアバウトだった。代走だけだと思い込んでいたのも悪かった。今日は動画をみて準備ができる。打席に立つ可能性がある限りは1%でも出塁できるように自分の原点に立ち返る。バント、バスター、叩きつけるバッティング、カット、配球の読み、自分のできる最大限のことをするぞ。

 そんなことを考えていると次に相手の野手陣について話題は移っていた。


「相手の野手陣は3試合でエラー1つで守備は上手い。バッティングに関しては8割くらい単打で長打を狙うよりもバットコントロールが上手いバッターが多いぞ。相手とのレベルが拮抗している試合は犠打や進塁打をしてきてチームバッティングもやってくる。理想の展開はこっちが常にリードを保って相手に無理なバッティングをさせたい。毎試合言っているが、先制点頼むぞ。相手に流れを渡さないそんな試合にしていこう。こっちの先発は白田に任せるが、何が起こるかわからないから赤座も中継ぎで準備してほしい。あと2つ絶対に勝って甲子園にいくぞ」


 あと2つ勝てば甲子園という言葉に皆やる気をみなぎらせた。

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