27話 準々決勝 小手前鷹松高校②
1回を抑えた赤座先輩は、その後ストレートを中心にしたピッチングで調子を上げていった。
2回から5回までランナーを出さずに抑えている。
一方打撃陣は毎回ランナーを出すのだが、なかなか得点に結び付かず0-1のまま5回の攻撃が終わってしまった。
「攻撃の時間は長く、守備の時間は短くできていて流れも完全にこちらにきている。ただ相手のピッチャーはピンチになると球速の表記以上に球に勢いがあって、各バッターが差し込まれているな。状況によってはスクイズのサインを出すと思う。まずは追いつくぞ」
監督も言った通り、流れはこちらにある。ただ回が進むごとに点数が入らないことへの焦りも感じる。俺の出番があるかはわからないが声出しで少しでもチームを鼓舞できるようにするぞ。
6回の表も赤座先輩は3者凡退で抑えた。
実力を発揮すればなかなか打てるようなピッチャーではないのだ。失点はしているもののヒット1本も許していない。絶好調なだけに早く追いつきたい。
6回裏の攻撃は9番の赤座先輩からだ。7球粘るもサードゴロに倒れてしまった。
1番の野田先輩がセンター前ヒットを打ち、2番の渚先輩が送りバントを決める。
3番の桜田先輩はここまで全て四球でこの回も四球だった。
スタンドから野次が聞こえた。
「うちで1番打てるバッターで勝負してこないのずるいよな」
「ここまで露骨だとこっちを応援してる観客もああいう反応になるよね」
「1回負けたら終わりのトーナメントなんだ。格上相手に勝つためには手段を選べないだろう。現に相手はノーヒットなんだし。それでも俺たちだって負けられない。1年生の俺たちは出番がきたら絶対結果出すぞ! 先輩たちをこんなところで負けさせるわけにはいかない」
龍樹はそんな言葉を残してブルペンへ向かった。俺が出番があるとすれば代走だろう。終盤でもし負けている展開なら試合を左右する場面だ。プレッシャーの中でも絶対ホームに帰還できるように今のうちから準備するぞ。
打席に立つ4番の清水先輩は8球粘って四球をもぎ取った。これで2アウト満塁。
ここで相手のピッチャーが交代。ピッチャーはライトへ行き、左投げの2番手ピッチャーがマウンドへ上がる。
さっきとはタイプの違うピッチャーに2球で追い込まれてしまい、3球目のストレートを捉えるもセンターライナーに倒れた。
6回終わって点数変わらず0-1。
あと1本出れば得点できる展開なのだが、なかなか出ない。
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