25話 試合後の自宅

 3回戦が終わって家に帰宅すると芽依が来ていた。両親が夕食に誘ったみたいだ。


「試合お疲れさま!今度は活躍してるところが見たいなぁ。でも昔から活躍してるところしか見てなかったから今日は新鮮だったよ!」


「来てくれてありがとな。今日はチャンスがなかっただけだ。今度チャンスがあったら活躍できるように頑張るわ」


 野球部の練習が忙しくて芽依と会ったのはかなり久しぶりだ。うちでご飯を食べていくなんて、やっぱり母さんの料理が好きなんだな。美味しいし当たり前か。


「おかえりなさい。ご飯もうすぐできるからお風呂入ってらっしゃいね!」


「わかった!」


 お風呂を終えて、最近あったことを話しながら夕食を食べた。あっという間に夏休みだもんな。忙しさも相まって時間の流れが早く感じるなと会話をしながら心の中で思っていた。


「走さん、野球漫画持ってる?」


「あるけど、それがどうかしたのか?」


「貸して欲しいなぁ!」


「陸上漫画はもう良いのか?」


「今は野球漫画を読みたい気分なの!」


「じゃあ、マイナーとかヤクルトの月とかダイヤのキングとかがおすすめかな?」


「とりあえず3巻ずつ貸してー」


「了解。持ってくるわ」


 世間でも人気の高い野球漫画を貸すことにした。小学校の頃は貸してって言わなかったし、応援に来ててもあまり楽しそうじゃなかったのかもしれない。野球に興味を持って貰えて嬉しいな。


「ほい。持ってきたぞ」


「ありがと!そのうち返しに来るね!」


「何回か読んだしいつでも良いぞ」


 芽依は大事そうに漫画を抱えて帰っていった。いつも大切に扱ってくれるからありがたい。龍樹とかに貸すと折れ曲がって返してくることもあるからな。気をつけてほしいものだ。


 最近はプレッシャーを感じることが多かったから久しぶりにリラックスできた気がする。いつもとは違う日常も偶には良いなと思った。


―――――――――――――――――――――――


 「芽依ちゃんがあんなにわかりやすくアピールしてるのにどうして気付かないのかしら。こういうところはパパそっくりなのよね。こういうのは自分たちでどうにかする問題だから私はそっと見守っておくわね」


「芽依ちゃんって走一郎のこと好きだったのか。俺も気付かなかった。ママの言う通り俺に似たのかもしれないな。ママに告白したのオリンピックで優勝した後だったし、当時はママが俺のこと好きだったとは微塵も思わなかった。走一郎もいつか気付いてくれるといいな。俺も陰ながら見守っておくよ」


 走一郎がいなくなったリビングで両親がそんな話をしていた。

 

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